<高校サッカー:青森山田2-2(PK3-2)関大一>◇準決勝◇9日◇国立

 青森山田(青森)が県勢初、東北勢としては06年度大会で優勝した盛岡商(岩手)以来、3大会ぶり6度目の決勝進出を決めた。関大一(大阪)戦は前半を2-0で折り返したが、後半終了間際にまさかの2失点。苦しみながらもPK戦を3-2で制し、11日の山梨学院大付(山梨)との頂上決戦に進んだ。左ひざ前十字靱帯(じんたい)断裂から復帰したMF椎名伸志主将(3年)が、今大会初ゴールをマーク。全国最北端Vへ、ムードは最高潮だ。

 技ありの今大会初ゴールは、痛めている左足から生まれた。1-0の前半39分、ゴール正面、ペナルティーエリアのやや外でこぼれ球を拾うと、椎名はすぐに視線を上げた。飛び出していた「相手のGKの位置を確認して蹴った」(椎名)ループシュートが、ゴールマウスへ吸い込まれる。バックスタンドの応援団に向かって両手を突き上げると、大歓声を一身に浴びた。

 「長時間出ていると、ひざに力が入らなくて不安になる」。試合後、椎名は患部の状況を、そう説明した。悪夢に襲われたのは、昨年8月のこと。練習試合で左ひざ前十字靱帯を断裂し、全治8カ月の診断を受けた。この日、観戦した母優子さん(54)が「走っているだけで不思議なくらい」と驚くように、今大会への出場は絶望視されていた。

 それでも椎名はあきらめずにリハビリを続け、わずか4カ月でピッチに戻ってきた。大会期間中も通院しているが「夢の舞台なので、もう1回ここ(国立)に立つ」と言葉に力を込める。あと1戦、何があろうと決勝のピッチに立つつもりだ。

 例年、サッカー部員は20人前後しか取らないが、現3年生だけは38人が所属。個性派ぞろいで、ともすれば衝突しかねない集団を、主将として椎名はまとめ上げた。退部者もゼロ。優子さんは「引っ張るタイプじゃなく、いつも朗らかだから、人が集まってくる感じ」と分析。ピッチ内外で椎名への信頼は厚い。

 前半31分にはFW野間涼太(3年)がPKで、今大会通算4得点目を奪い得点王争いで1差に肉薄。さらに頼れるキャプテンのゴールで、イレブンの勢いは止まらない。野間が「勝つために自分がゴールを決める」と言えば、椎名も「ここまできたら優勝しかない」と意気込む。青森県の歴史を変える-を合言葉にするイレブンが再び、国立の観客を総立ちにさせる。【山崎安昭】