3月15日に開幕するJ3に、今年も盛岡、秋田、福島の東北勢3チームが挑む。昨季7位の福島は、昨季まで広島や神戸で13年間プレーした地元出身のベテランFW茂木弘人(30)が完全移籍。まだJ2昇格条件を満たしていない環境下で、将来のトップリーグ入りを目指す若きチームの礎になる覚悟だ。

 今季「Link」をスローガンに掲げ、地域との「つながり」を重視する福島が、将来のJ2、J1昇格を目指して目玉補強を行った。昨季までJ通算260試合出場の茂木が、自らのサッカー人生をかけて地元に戻ってきた。複数のJクラブからの誘いを断り、J3でのプレーを決断した茂木は「神戸との契約が満了になり、一番最初にオファーを受けた。自分を必要としてくれる熱意と、これから成長していくチームだと感じた」と入団理由を明かした。

 プロ14年目。3月2日には31歳になる。円熟味が増す一方で「キャリア終盤」の思いもある。生まれ育った故郷は東日本大震災、原発事故の被害を受け、復興半ばだ。地元貢献への気持ちは強い。これまで「東北人魂を持つJ選手の会」などを通じて被災地の支援活動に参加してきた。茂木は「避難している方々もいっぱいいる。まだまだやることはある。試合を見て何かを感じてもらって少しでも力になれば」と全力プレーを誓う。

 FW、DF(サイドバック)と複数ポジションをこなす。茂木は「監督に任せたい」とチーム戦略を優先する。昨季チームは30得点38失点で9勝9分け15敗。得点力不足に苦しんだ栗原圭介監督(41)は「基本的にFWで」と茂木の決定力に期待している。

 チームはスタジアム問題など、まだ昇格条件を満たしていない。今季優勝してもJ2に上がることはできない。それでも茂木は将来的な昇格をにらみ、若いチームにJ1での経験を注入していくつもりだ。「試合になればカテゴリーは関係ない。スピードとゴール前のプレーを見せたい」。3月15日の開幕戦はホームで迎える。福島への思いを胸に、茂木が故郷のピッチに立つ。【佐々木雄高】

 ◆茂木弘人(もぎ・ひろと)1984年(昭59)3月2日、福島市出身。松川小-松陵中-聖光学院高。00年仙台に強化指定選手登録。02年広島入団。06年神戸に完全移籍。FWのほかSB、SHと複数ポジションをこなす。U-16~同21まで各世代の日本代表を経験。01年U-17世界選手権、03年U-20ワールドユース出場。J1通算183試合(20得点)、カップ戦29試合(3得点)、J2通算77試合(5得点)、天皇杯13試合(4得点)出場。背番号7。家族は妻。174センチ、71キロ。血液型B。