欲張りエースの開幕弾で7冠獲得へ最高のスタートを切った。G大阪FW宇佐美貴史(22)が今季1号となる決勝点を挙げ、浦和に完勝。8年ぶり2度目の優勝へと導いた。今季獲得可能な7冠を狙う点取り屋はどの大会でも得点王も目指す。

 エースらしい、宇佐美らしくない1発だった。0-0で迎えた後半23分。MF遠藤の右CKをFWパトリックが頭で落とす。そのこぼれ球を予想していたかのような宇佐美が、右足で直接ゴールへと仕留めた。真骨頂のドリブルではない、頭脳的な位置取りから生まれたG大阪にとっても今季第1号だった。

 「『1タッチゴール』を今季のテーマにしているので。自分らしくはないかもしれないけど、手応えにはなる点だった。まだまだ満足できるわけではないけど、何試合かこなすうちに、もっと手応えを得られると思う」

 夢のような目標がある。昨季3冠を獲得したG大阪は、4日前に黒星発進したACLを含めて最大7冠の獲得を目指す。22歳はその全大会で「得点王」を目指している。負傷で開幕から欠場を続けた昨季は、それでもJ1で26試合10得点の結果を残し、3冠の立役者となった。期待されながら成就できない日本代表入りへ「結果が全てだと思う」と言い聞かせてきた。

 長谷川監督と今季から就任した元日本代表分析担当の和田コーチから「前線の動きだし」について課題を与えられていた。メッシら世界最高FWの映像を見ながら「こういう動きだしのイメージを持って欲しい」と言われた。本人は「まだまだ新しく挑戦している状況」と言うが、この日の得点は新たな領域に踏み出した証しでもあった。

 昨季J1と天皇杯王者として、J1で2位だった宿敵浦和を圧倒した。昨年11月22日のJ1天王山も、後半終了前の連続得点で同じ2-0のスコアで優勝をたぐり寄せていた。大量補強の浦和に対し、FW赤嶺ら少数精鋭の補強にとどめたG大阪。現有戦力の中で成長を止めない宇佐美が、胸を張った。

 「最高のコンディションが出せない中で勝てる勝負強さは持っている。これからクオリティーを上げるのに、短いスパンで試合がたくさんあるのは幸せ」。中2日でACL城南戦が控え、この日の試合後に韓国入りという強行軍も気にしない。「ACLに向けてもいいサイクルができた」。欲張りエースの挑戦はまだ始まったばかりだ。【小杉舞】

 ◆G大阪が狙う7冠 富士ゼロックス・スーパー杯でまず1冠獲得。連覇を目指すのは、今季から2ステージ制となるJリーグの年間王者、ナビスコ杯、天皇杯。11月に決勝があるACLで08年以来の優勝を飾ると、12月のクラブW杯(開催国未定)に出場できる。8月11日には昨季ナビスコ杯王者として出場するスルガ銀行選手権で南米王者リバープレート(アルゼンチン)と対戦。

 ◆富士ゼロックス・スーパー杯 Jリーグ開幕を告げるシーズン最初の国内公式戦。基本的に開幕1週間前に実施。前年度のJ1年間王者と天皇杯王者の対決だが、同一クラブ優勝の場合は08年までは天皇杯準優勝、09年からJ1年間準優勝チームが代替出場。賞金は優勝3000万円、準優勝2000万円。