Jリーグ・ベガルタ仙台、モンテディオ山形でプレーした財前宣之氏(41)は今、自身が輝きを放った東北の地で原石の発掘に取り組んでいる。「俺が磨く」をキャッチフレーズに、小学生を対象にした「財前フットボールスクール」を仙台市内に立ち上げてから、1年がたつ。若くして天才少年として才能を開花させながら、3度の前十字靱帯(じんたい)断裂という重い十字架を背負い、苦難のサッカー人生を歩んできた苦労人が、これまで語らなかった秘話を明かし、後進育成への思いを語った。(聞き手 下田雄一)

 仙台でサッカースクールを立ち上げて1年。出身は北海道で、キャリアの始まりは東京だが、プロとして最も輝きを放ったこの地で、小学生を対象にしたサッカースクールを開校した。S級ライセンスを取得し、Jリーグの指導者という選択肢があってもいいが、育成世代の指導にこだわる。

 財前 実家があるわけでもないんだけど、仙台は居心地がいいし大好きな土地。お世話になった人もたくさんいる。ベガで7年、モンテで4年。振りかえると、やはりここは第2のふるさと。応援してくれた人に恩返しがしたい。スクールの生徒がお世話になった人の子供だったりする。あとはセカンドキャリア。選手はみんな辞めた後の生活が不安で受け皿になれればって。Jリーグの監督になりたいとかはない。ビジネスマンとして成功したい。

 個性的な選手が少なくなった昨今、育成プログラムの現状を疑問視する。そこにはレールを逸脱して突き進んできた天才ならではの発想がある。

 財前 ひと昔前の選手はみんな自分の感性でやっていた。戦うには自分を知ることが大切だった。自分ひとりで考えたり。俺の場合、体が小さかったから、大きな選手といかにボディーコンタクトしないで、ボールを早くさばいて受け直せるかを、まず考えた。人のいいところも見て盗む。サッカーって答えがないところが面白いんだけど、今は教科書がある。指導者がたくさんいて、いい情報、ノウハウがありすぎる。それに戸惑っている子供を見てきた。Jリーグでも上から試合を見ているとみんな同じに見える。個性がないんですよ。でも、大久保嘉人(東京)は個性が強いよね。こぼれ球をいつも狙っている。あれぐらいの表現力がないと海外では生きていけない。日本人って人のよさが出ちゃう。ミスしても俺によこせよ! ぐらいじゃないと。いい子ちゃんじゃダメ。自分の感性で状況を打破できる子供を育てたい。