J2東京ヴェルディを16年限りで引退した永井秀樹さん(46)が14日、東京・味の素フィールド西が丘で引退試合「OBRIGADO NAGAI」を開いた。試合後の永井さんの言葉が、1週間がたった今も、忘れられない。

 永井さん 現役の選手にもロッカーに入ってもらって…多分、何かを感じ取ることが出来たと思うんですよね。なぜ、あの時代、ヴェルディが最強だったのかを。普段はバカ話をしていても、だんだん試合に入っていくにつれて、すごい緊張感も上がっていく。

 VERDY LEGENDSがJ LEGENDSに3-2で勝った引退試合には、日本サッカー界をけん引した往年の名選手が顔をそろえた。中でもVERDY LEGENDSには、ラモス瑠偉氏(60)、横浜FCのFWカズ(三浦知良=50)、武田修宏氏(50)、北沢豪氏(49)ら93、94年と2年連続でJリーグ年間王者に輝いた、最強メンバーが名を連ね、当時の監督だった松木安太郎氏(59)が率いた。

 試合前のミーティングでは、松木監督がフォーメーションを書いていくと、ラモス氏がまず意見を言い、カズ、北沢氏も続いたという。カズも試合後、笑みを交えながらロッカールームの様子を明かした。

 カズ ミーティングで円陣を組んだ時も、松木さんは何も言ってないからね。ラモスさんが全部、言う(笑い)控室は、24年前のチャンピオンシップと変わらないですよ。松木さんが監督で、僕らが選手なんだけど、本当にあんな感じで冗談を言い合う。松木さんも、ああいう性格だから全部、受け入れてリラックスさせてくれて、みんながピッチに1歩立ったら戦う。

 個性豊かで能力の高い選手たちが、時に冗談を交えつつも、勝つために必要とあれば言いたいことをしっかり言い合い、ピッチに立ったらチームが1つの戦う集団になる。黄金時代のロッカールームが、20年の時をへてよみがえった。

 本番でも、黄金時代の輝きを放つプレーが飛び出した。後半16分、カズが左から上げた浮き球パスを、ペナルティーエリア正面で受けた北沢氏がラモス氏につなぎ、同氏が右足でDF2人の間に上げた浮き球に飛び込んだ永井氏が、右足でこの日3点目をたたき込んだ。流れるようなパス回し、連係からのゴールに客席は熱狂した。

 VERDY LEGENDSのメンバーには、東京Vの現役選手から守護神のGK柴崎貴広(35)、故障で離脱中のMF沢井直人(22)、MF井上潮音(20)が入った。3人はロッカールームによみがえった最強時代のミーティングを、じかに見る機会に恵まれた。柴崎は「純粋に勝つために何をするかを、見ることが出来た。なかなか経験できない。個人的にはモチベーションになった。時代が違うので、若い子はそのまま受け取れないかもしれないけれど、永井さんは現役時代も、うまく伝えてくれているし、自分も伝えていければ」と語った。

 永井さんは今、東京Vでユース監督兼GM補佐として多忙な日々を送っている。「あらためてヴェルディのすばらしさを、最後で感じられて本当に良かった。仕事をやらせてもらっている以上、チームを本当に再建したい。J2にいるべきチームじゃないと思うし、黄金時代…いや、それ以上、日本サッカーを引っ張るチャンピオンチームにするのが一番近い目標」と誓った。目標を実現するために必要な精神性と魂…そしてヴェルディが本当に強いチームだということこそ、永井さんが引退試合で一番、伝えたかったことではないだろうか。【村上幸将】