サッカー元日本代表DF岩政大樹(35=関東1部リーグ東京ユナイテッド所属)が、J2松本山雅FCを率いる名将・反町康治監督(53)と語り合った。
岩政はスカパー!のサッカー情報番組「スカサカ!ライブ」の対談コーナー「今まさに聞く!」のメインキャストとして反町監督と対談。反町監督はアルビレックス新潟、U-21日本代表、U-23日本代表、2008年北京五輪代表監督、湘南ベルマーレと監督を歴任した名将。現在はJ1昇格を目指し、大混戦のJ2でプレーオフ昇格圏の6位と奮闘している。2人の話題は、松本山雅FCのチーム事情に始まり、反町監督のサッカー観や日本サッカー現状など多岐にわたった。
9月29日(金)の初回放送(21時~22時半)を前に、サッカーファン必見の対談の一部を紹介する。
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岩政 まず今シーズンの戦い、なかなか思ったように勝ち点が伸びていないように思うんですけど、話せる範囲で今どのような感じですか?
反町 うーん、まあそうですね。我々が強くなっていないのか、もしくはほかのチームが強くなったのか、っていう相関関係は当然あるので何とも言えませんけど、やっぱり、うーん、J2は難しいですね。
岩政 得失点を見てもだいぶん、もっと上位にいていい状態ですし、戦い方も長くやっていて、圧倒している試合もあると思うんですけど、なかなか勝ち点に結びついていないというような印象なんですけが、そのあたりはどのような感じなんですか?もどかしいというところもありますか?
反町 もどかしいといえばそれまでですけど、やっぱりいろんなことを考えながら試行錯誤しながらやっている中で、いい回答を作り出せていないというのはあるでしょうね。それは我々スタッフの問題もあるし、でもそう簡単にはいかないですよ。
岩政 昨年、J2に戻ってから少しビルドアップの道筋みたいなものを付けたのかなと
思ったんですけど、それは監督がこう、ある程度示したんですか?
反町 ま、おっしゃる通りで、今まで松本山雅は僕が来てからは少しロングボールを多用しながら相手の最終ラインと勝負するという形でやっていたんですけど、それである程度結果と形が出てきてはいたものの、もう1つランクアップをするためにということで、昨年から結構そういうビルドアップのボールのルート、最後のゴールするためのルート、そういうのは少し考えながら練習でもしくは映像を見せながら取り組んできた。まあそういう形ですね。
岩政 シーズンの中で監督をしていて相当な時間をサッカーにつぎ込んでいて、サッカーをずっと考えなければいけないじゃないですか。監督の人生みたいなのを伺いたいんです。監督になるというのは選手時代に多少、自分でイメージされていたんですか?
反町 うーん…プロに…昔の人なら知っているかも知れないですけど、社員選手でやっていて、プロになってじゃあこれからは本当に自分が商品として考えた場合に、何をするべきかということをしっかり考えました。で、一つ目の選択肢は指導者、サッカーを選手の時も、岩政さんもそうかもしれないけど、いろんな目で見ることを意識してやった部分もあります。それは、だから面白い練習をしたらそれをメモして、今でも持っていますけど、どういう監督がどういうサッカーをしたいのかメモしたりしていた。それは今の参考になりませんけど、そういう意識は昔からあったのかなと、今思うと。
岩政 すんなりプロ選手になったわけではなくて、サッカー選手というと少しまた違う経歴というか、考え方をお持ちだったのかなと思うんですけれど。
反町 時代が時代だったんでね、その頃はまあJリーグが開幕したとき、ちょうど28、29歳で、ちょうどそういう選手の過渡期にある中で自分はこれからどうやって生活していくかなというところがあったので、外から見ればかっこいいかもしれないけど、我々からしてみると中途半端な考え方だったですよね。それを断ち切って、やっぱりサッカーのフィールドの中で勝負したいと、そこからずっと現場思考もある中で、ここまでやってきたなと思います。
岩政 いろんな見方をしていたという話があったんですけど、人と違うと思ったこと、例えば1つのプレーを見た時の、サッカーって1つじゃない、いろんな見方ができるじゃないですか、それはもちろん戦術的に見ることはできますし、もっと僕なんか心理で考えることが好きなので、ピッチの中に選手たちの中に入っていくことが多いんですけど、その頃の選手だった時、例えば練習したり試合したりする中で少しほかの選手ととらえ方をこう変えてみてみようみたいなことはあったんですか?
反町 どちらかというと性格上偏屈なところがあるので、反面教師じゃないんだけれど例えば紅白戦をやって僕はAチームじゃなくてBチームだとすると、Aチームが紅白戦の準備でメンバー分けをしているとき、(僕は)Bチームを集合させて、「こういうことをやろうよ」とか、始めちゃう。それでうまくいっちゃったりするわけよ。そうすると、「あーサッカーって楽しいな」と思うわけ。それは本当は良くないことなんだけど、だけどそういうところがちょっとあるんだよね、やっぱり。それは前面に押し出しちゃいけないんで、ちょっとこうやってみようよと。だからあなたも何とくなくそういうところを感じているタイプかもしれない。
岩政 大好きです、そういうの。
反町 でも、そういう風にやると「ああ、こういう新しい道が見えてきた、開けるなとか、こういう考え方があるんだな」と、だからサッカーって本当に多種多様で、例えばシステムが同じだとしても全然、やるサッカーは違うわけだし、一番大事なのはスタイルで、だから選手とスタイルが融合しているとやっぱりチームはうまく機能するわけであってね、だから選手を見てスタイルを作り出して、そのスタイルを作り出すことによってシステムがあるというようなそういう段階がチーム作りでいいんだよね。
岩政 僕はセンターバックなんですけどボランチの選手の立ち方とか見ている方が後ろからの景色が見やすくて、ボランチの選手を見たりすることが多かったりするんですけど、どこのポイントで試合みますか?
反町 ボールがサイドに行ったとき、逆サイドのポジションはよく見るね。それがちゃんとそろえているか、ちゃんと絞ってるか、体の向きがいいとか、逆サイドを絞りながら見ているとか、それでやっぱりチームの統率されているかどうかとかっていうのは見るところかもしれないね。
岩政 そういうところをしっかりやっているなっていうチーム、海外にどこが最近注目していますか?
反町 一番やっているのはやっぱりモウリーニョとか、(マンチェスター)ユナイテッドとかチェルシーとかが多いよね。
岩政 そのへんのあたりもまだ、徹底っていうかポジショニング、いろんな選手のポジショニングという意味では、まだ日本も足りない、言及されるところが少ないのかなっていう気がするんですけど。
反町 そうだね、まだ言及されていないところも多いかもしれないね。
岩政 スペインとかそうですけどポジショニングとか立ち位置とかって言われ始めて、守備もそれもあるところがあるじゃないですか、日本って組織的、組織的って言いながら意外と1対1の戦いが好きで、サッカーだけじゃないですけど、人を見るうえで、相撲とかいろんな競技で1対1が多いじゃないですか。そこでこう、センターバックのマークもそこのデュエルまではいかないんですけど、球際、球際ばっかり言っていて、その前のスタート段階のところがなかなか少ないという印象があるんですけど、逆に言うと反町監督はそこを徹底されているというか、けっこう厳しく細かくおっしゃっています?
反町 一番大事なボックス、ペナルティーボックスのトレーニングはやっぱり、なるべく増やすようにはしています、攻撃も守備も。そこでやっぱり違いを見せなきゃいけない。攻撃ではね。ディフェンスはもうペナルティーボックスでの守り方っていうのはウチははっきりしているんですけど、それをやっぱり捉えて、失点を少なくするような守りをしなければいけない。だからそれは最終的にはオンとオフの1対1、というところがかなりでかいと思う。これはなかなか大人になってから教えるのは遅いと思います。
岩政 そこはもっと日本全体である程度体系化していった方がいいという事ですよね。
反町 ご存じのように全体的に日本はいいセンターバックがいない。ビルドアップができるんだったら少しディフェンスの力が弱いとか、ディフェンスの力が強いとビルドアップが弱いとか、両方できてしかもある程度背が高くて、スピードがある。そういう選手がたくさん出てこないといけないと思うんですけど、ちょっと日本は厳しいだろうな。それは一番先頭もフォワードもそうだろうし。中盤の選手はいい選手がたくさんいる。ボールを動かせて、嫌なところでボールを受けて、前を向けて、そこからのアイデアを持った選手はたくさんいる。
◇初回放送 9月29日(金)21:00~22:30、サッカー情報番組「スカサカ!ライブ」今まさに聞く~松本山雅FC反町康治監督篇~前編。スカサカ!(CH800/580)再放送多数