負けなかった! ベガルタ仙台がFW石原直樹(33)の劇的な同点ゴールで貴重な勝ち点1を挙げた。東日本大震災から今日11日で7年を迎える。節目の一戦は1点ビハインドで迎えた後半41分、2戦連発となるエースの一撃でスタジアムは歓喜に包まれた。昨年は開幕2連勝後、3月11日にホームで行われた同じヴィッセル神戸との一戦で黒星。その反省も踏まえた準備も功を奏した。

 ゴールの瞬間、いつもはクールな石原が珍しく、歓喜の雄たけびを上げた。「ニアでジャメ(FWジャーメイン)がつぶれてくれて、自分のところにこぼれてくるなとイメージできていたので。慌てることなくシュートまで行けて、決めることができてよかった」。ボールがネットを揺らすのを確認するとガッツポーズをつくり、イレブンと歓喜の抱擁をかわした。

 昨年は、新システムの3-4-3に移行し開幕2連勝。3戦目は、この日と同じ震災復興マッチの意味合いで神戸と対戦し、0-2で敗戦している。あれから1年、チームは逆境から追いつけるほど、タフになった。FW石原は「1点取られても1点返せると思っていた。僕自身もチャンスは絶対来ると思っていたので」。昨年は「無意味なロングボールが多すぎる」と苦言を呈すほどイライラを募らせていたが、2試合連続でゴールを決め、見違えるような連動性に手応えをつかんでいた。

 特別な一戦だけに、メンタル面でのデリケートな手綱さばきも光った。渡辺晋監督(44)は「選手たちが最後までひたむきに戦う姿勢を示してくれました。昨年は3月11日の神戸戦ということもあり、僕自身多くのことを背負いすぎてしまい、必要以上に選手をけしかけてしまった」。苦い経験を生かし、試合前のロッカールームでは「のびのび戦ってこい!」と、プレッシャーを払ってから、選手を送り出した。

 前線で体を張って戦う姿勢を示し続けたFW石原は「体は戦っていても頭の中は平常心を保っていた。ここ3試合負けてはいないが、受け身になっているところがある。相手に合わせて試合に入ることが多いが自分たちのサッカーを信じて戦っていきたい」。特別な1戦で得た課題を糧とし、目標のトップ5へ向けさらなる進化を成し遂げる。【下田雄一】