今節は注目カードが西に集中している印象だ。

 <1>ガンバ大阪-FC東京

 宮本恒靖新監督の就任後、1分け2敗といまだ勝ち星がなく降格圏17位に沈むG大阪は、17年までチームを率いた長谷川健太監督という“難敵”を迎える。17年は宮本監督がU-23、長谷川監督がトップの監督という関係性だった。選手も熟知され、手の内も知られている可能性が高い上、リーグ戦では3月31日のアウェー戦に2-3で敗れたのを含め直近は1分け1敗と勝ちがない。長谷川監督が率いた14、15年にG大阪でプレーした東京のブラジル人FWリンスも7月にヴァンフォーレ甲府から加入し、途中出場ながらリーグ戦2戦連発中と不気味な存在だ。ホームでは4勝3分けと7戦負けなしというデータが、G大阪の数少ない希望か?

 <2>ヴィッセル神戸-ジュビロ磐田

 5日にスペインから再来日したMFアンドレス・イニエスタと、左足内側楔状(けつじょう)骨剥離骨折で戦線を離脱していたFWルーカス・ポドルスキが9日の練習で初めて一緒に戦術練習を行った。スペイン代表の一員として10年のワールドカップ(W杯)南アフリカ大会を制したイニエスタと、ドイツ代表として14年のブラジル大会で優勝したポドルスキの“W杯Vコンビ”の初共演なるかが、今節最大の注目だろう。磐田にはリーグ戦ではホーム2連勝中で、磐田がJ1に復帰した16年以降3シーズンの公式戦の成績を見ても5勝1敗。しかも1敗はアウェーと完全に“お得意さま”にしている。

 <3>サンフレッチェ広島-V・ファーレン長崎 世界で唯一の原爆の被爆都市となった広島、長崎をホームタウンとする両チームが、恒久的な平和を祈り、戦う「ピースマッチ」は、開催されること自体が非常に意義深く、世界的にもっと発信されてしかるべき試合だろう。長崎が今季J1に昇格したことで実現した歴史的なカードは、4月28日に長崎で初戦が行われ、広島が後半7分のFWティーラシン、同14分のDF佐々木翔のゴールで2-0と貫禄勝ちした。キャッチコピーの「OneBall.OneWorld.スポーツができる平和に感謝」と「ピースマッチ」という言葉が、今後も語り継がれるような熱戦を期待したい。

 <4>サガン鳥栖-浦和レッズ

 鳥栖は浦和とのリーグ戦では、2戦連続の引き分けを含む1勝2分けと3戦連続負けがなく、ホームでも1勝1分けと数字上は分が良い。J5戦目となるFWフェルナンドトーレスも、鹿島アントラーズから移籍のFW金崎夢生も、ともにコンビを組んで4戦目だけに、そろそろ鳥栖での初ゴールを決めたいところだ。

 この試合では、偉大な記録が達成される可能性がある。浦和MF阿部勇樹が出場すれば、36歳11カ月5日の最年少でJ1550試合出場を達成する。キャプテンをMF柏木陽介に譲った今季は、リーグ戦では13試合に出場も先発は6試合にとどまっている。ここ6試合も途中出場が続いているが、浦和は3勝4分けで7戦負けなしと復調してきた。

 試合が拮抗(きっこう)した後半、特に夏場は先発した選手たちが心身ともに苦しくなってくる中、阿部が投入されると、明らかに浦和は中盤にボールが収まるようになり、落ち着く。攻撃の際、各選手はパスの出し所がなかったり、攻撃の仕掛けがうまくいかない際、阿部にボールを戻して、そこから攻撃の再構築が計られている。守備でも、ゴール前のせめぎ合いからこぼれたセカンドボールを、阿部が確実に拾って前線につなぐシーンも少なくない。

 試合を無事に終わらせる“クローザー”として、ベテランの味を存分に発揮する阿部の最年少記録達成の可能性含め、今節は西に注目だ。