湘南ベルマーレが27日、ルヴァン杯の初タイトルをかけ埼玉スタジアムで横浜F・マリノスとの決勝に臨む。曹貴裁監督の体制になって7年目。3度の昇格と2度の降格を経験したクラブの快進撃には、今季から加入した“助っ人”の存在も大きい。クラブは今年4月、パーソナルトレーニング事業を展開するRIZAP(ライザップ)グループの傘下に入ったことを機に、今年6月にライザップから管野翔太氏(30)が「パフォーマンス・アップ・チーフトレーナー」として加入したのだ。

ライザップは一般的に「筋トレ、糖質制限、ダイエット」のイメージが先行する。FW山崎凌吾(26)は「筋トレをさせられるかと思った」、FW高山薫(30)も「何が起こるんだろうかと半信半疑だった」と振り返る。しかし、ふたをあければ指導内容はイメージとかけ離れるものだった。

管野氏は、まず、選手全員と個別面談し、それぞれの「なりたい体」「課題」「夢」をリサーチ。その上で、基本的に1対1で、各選手の要望に沿ってトレーニングメニューを渡すほか、試合や練習でのプレー中の姿勢、体の動かし方を指導している。管野氏は「サッカー選手は1日1日が勝負。目標からの逆算で今、何をやるべきか分かった方が分かりやすいと感じた。体の動かし方、自分の体を正しく動かせることに注力しています」と明かす。

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高山は17年3月、右膝の前十字靱帯(じんたい)断裂を経験。復帰後は逆の左ひざの痛みを覚えるようになっていた。管野氏は高山の走り方を見て、膝に負担のかかる動かし方をしていると見抜き、膝に優しい体の動かし方を伝授。管野氏は「高山選手には、股関節や股関節から上の部分を軸に動かすような意識付けをしています。足を動かすときも、足を回すのでなく、股関節やその上の体の中心や肩甲骨を意識して動かすようにと。意識だけでも大きく変わるんですね。トレーニングは、体の中心を使うことや臀部(でんぶ)を含めた体の背面の筋肉を鍛えたりしています」。1回30分ほどのトレーニングを週初めに習慣的に行っており、高山は体の変化をこう口にした。「トレーニングのメニューをもらって、もも裏やおしりに負荷かかるようになって膝に負担がかからなくなっている。彼はいろんな知識あるし。自分はそれで成長をすごく感じている。体の切れも出てくるし、いいですね」。

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また、管野氏は選手からオーダーがあれば、1試合通して気になる点を、メールを通じて感じたことをフィードバックしている。DF岡崎亮平(26)は天皇杯・川崎F戦で、PKを与えてしまった場面の瞬間の画像とともに「重心が下になりすぎている」と指摘を受けた。重心が下になり過ぎたことで、相手の速い動きに後手に回ってしまったのだ。岡崎は「以前から自分でも気になっていた部分で。今は、重心も含め体の動かし方を日常生活から意識している。一緒に考えて寄り添ってくれる部分がすごく役立っている」と話す。MF秋野央樹(24)は、走りだす瞬間に、猫背になり、スピードをロスするフォームをしていたが、今は徐々に矯正されつつある。

今夏にJ2徳島から加入した山崎は、当たり負けしない体幹トレーニングに取り組んでいる。メニューは「企業秘密」だが、試合の当日もそのトレーニングに励んでいるそうで「効果が表れているのを実感する。相手DFを背負う部分もそうだし、無理な体勢からでも1歩が出るようになったし、そこも含めて体幹のレベルが上がった」と振り返る。

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管野氏は柏レイソルU-18出身。日本代表DF酒井宏樹ともプレーしていた。大東文化大のスポーツ科学科で、トレーナーに関する専門知識を学んだ。卒業後はパーソナルジムで体の使い方を学び、13年にライザップに入った。ライザップでは、サッカーとは別競技のアスリートを担当したほか、トレーナーを教育する立場を経験している。サッカーの現場に入って心がけていることは「選手の言葉と感覚をより理解すること」。加入して4カ月あまり。管野トレーナーと選手の二人三脚が、優勝への道を歩んでいる。【岩田千代巳】