50年ぶり出場の関学高(兵庫)が、0-2で優勝経験もある星稜(石川)に屈した。開始直後の前半6分に失点。描いていたゲームプランも失った。MF林幹太主将(3年)は、昨年度の兵庫県予選決勝で開始早々に負傷退場。敗戦の責任を背負ってきた。ようやく立った夢の舞台も、高い壁に阻まれた。。

50年ぶりの挑戦は、開始6分の失点で描いていたシナリオを崩した。一瞬の隙にこぼれ球を決められた。関学高の山根誠監督(62)は「常連校と50年ぶりだが初出場のうちとの違いが、立ち上がりの失点に出た」と振り返る。前半を無失点で耐え、後半勝負のゲームプランが早々に崩れ、後半16分に2点目を失った。

指揮官は「平常心で試合に入れた」と話す。しかし、林主将は「みんな緊張してたかな」と言った。全国大会の独特の空気感。50年ぶりの出場で、押し寄せるOBの期待は間違いなくのしかかっていた。林は「相手は決めるところで決める。その違いはあった」と唇をかみしめた。

ようやく立てた夢の舞台だった。1年前は悪夢。兵庫県予選決勝で開始早々に右足がつり、負傷退場。試合に敗れた責任を背負った。「思い出して、夢にも出てきた。夢の中では勝ったりして、ハッと目覚めて夢かと…」。先輩たちの涙が忘れられなかった。

「苦しかったと思う」と山根監督は、その思いを理解して主将に任命した。性格は比較的おとなしく「声で引っ張っていくタイプじゃない」と自己分析。それでもチームのために変わろうとした。一部の3年生が練習に遅刻する時期があった。林は「やる気ないんやったら来んでええ。邪魔やから」とピシャリ。チームの空気を引き締め、全国の舞台にたどり着いた。

敗れたが、新たな歴史に踏み出したのも事実。今大会のベンチ入り20人中1、2年生が12人もいる。山根監督は「現状では全国のサッカーに通用しないことが分かった。ただうちは若いチーム。これを糧に、普段からもっと厳しい戦いをしてまた全国で戦えるチャンスをつかみたい」。林が背負った敗戦の悔しさを今度は1、2年生が引き継ぎ、関学高の歴史が作られていく。【実藤健一】