Jリーグ史に残る世紀の大誤審、そして大逆転劇が起きた。浦和レッズ-湘南ベルマーレ戦の前半31分、湘南DF杉岡大暉(20)のシュートは右ポストに当たってネットも揺らし、完全にゴールラインを割ったが、これを山本雄大主審ら審判団がノーゴールと判定。猛抗議にも判定は覆らなかったが、怒りを力に変えた後半の怒濤(どとう)の3得点で、完全アウェーの埼玉で大逆転勝利をおさめた。

反骨心で湘南が勝利をもぎとった。0-2の前半31分、DF杉岡が左足で強烈なシュートを放つ。ボールは右ポストに当たってゴールに入り、左サイドネットを揺らしピッチへ戻ってきた。反撃ののろし。しかし、山本主審はボールが両ポストに当たってピッチ内に出たと判断したのか、そのままプレーを続行させた。

浦和GK西川が「確実に入っていた。入れられたので(センターサークルに)返したつもりだった」と投げ返したボールに、山本主審はインプレーのジェスチャー。最終的に湘南GK秋元が防いで試合が止まると湘南の曹監督、選手らが当然の猛抗議。試合は約6分間中断。スタジアムは騒然とした空気になったが、このまま0-2で前半を折り返した。

曹監督はハーフタイムに選手へ「このまま(試合を)止めるか続けるかのどっちかだ」と言った。何とボイコットも視野に入れた言葉を投げかけた。「選手がやると言うので送り出した」。すると後半2分のゴールを皮切りに何と3得点。4ゴールを“決め”、3-2で大逆転勝ちした。

MF梅崎は判定について表情を変え「逆転したことを美談にしてほしくない。正直、腹立たしい」と語気を強めた。当事者の杉岡も「VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)は物議を醸しているかもしれないけど、ゴールライン・テクノロジーは来年からでも導入してほしい」と訴えた。【松尾幸之介】

<Jの「誤審」アラカルト>

◆神の手 05年3月5日のジュビロ磐田-横浜F・マリノス戦で、磐田MF福西の右手甲にボールが当たってゴール。これが決勝点となり、磐田が勝った。

◆幽霊? 05年10月1日の柏レイソル-ヴィッセル神戸戦で、後半41分に交代で退こうとした柏MF小林が遅延行為で2枚目の警告。本来は柏が1人少なくなる状況だが主審は選手交代を認め、MF大野がそのまま最後までプレー。

◆今季は多発 3月31日の川崎フロンターレ-サンフレッチェ広島戦で、川崎FのMF長谷川が決めたゴールがオフサイドの判定でノーゴール。審判委員会は誤審と結論づけた。5月3日には鹿島アントラーズ-清水エスパルス戦、広島-横浜戦でも「幻のゴール」。今季は特に目立つ。