東京からスペイン1部の名門レアル・マドリードへ完全移籍することになった日本代表MF久保建英(18)が、試合後に行われた壮行セレモニーに出席した。
雨が降りしきる味の素スタジアムに18歳が姿を見せると、3万人を超えるサポーターから大きな歓声と拍手が起こった。昨季途中から期限付き移籍してプレーした横浜が対戦相手だったという巡り合わせもあり、横浜サポーターも大半がスタジアムに残った。両軍に見守られながら花束をおくられた久保は、ピッチの中央に用意されたマイクの前に立った。
先に横浜サポーターの方へしっかり180度向き直り「まずは横浜F・マリノスのファン、サポーターの皆様、さっき自分の(横浜時代に記録した)J1初ゴール(の映像)が流されなくてブーイング出てたと思うんですけど、後で自分が(関係者に)言っときます。半年間という短い間ではありましたが、自分が今こうやってここに立てているのは、正直に言いますけど、マリノスに半年間レンタルできたことが非常に大きいと思っています。感謝しかありません。ありがとうございます」と、感謝を述べ敵サポーターの拍手喝采を浴びた。
その後、東京サポーターの方に向き直り「自分が日本に帰ってきてから、今までほぼずっと東京でやってきて、最初はあんまり練習とかも行きたくなくて、つらい時期もありましたけど、( FC東京U-15)むさしに入ってむさしのみんなが仲良くしてくれて、飛び級のユースに上がり、ユースのみんなが仲良くしてくれて、さらにトップチームに上がって、トップチームの選手に助けてもらって、今の自分があると思ってます。あんまり何しゃべるか決めてこなかったですけど、映像とか見て思うことはたくさんありますし、こうやって雨の中たくさんの人たちが足を運んでくれてるっていうのは、非常に感謝してます。いいことばかりではなかったですけど、自分の力もあり、みんなの力も借りてこうやって一人前のサッカー選手として、東京を背負って世界に羽ばたいていけることを非常に誇らしく思います。雨の中長々とすみません。これからはFC東京の久保建英ではなくなりますが、FC東京に在籍した選手として、東京としての誇りを持って、つらいこともあるかと思いますが、その度に今の動画ももらえると思いますが見返して、元気出します。東京に来てから3年半、4年半になると思いますが、非常に(レアルに)行きたくなくなるくらい濃い時間だったと思いますし、苦渋の決断ではありましたが、自分の決断に誇りを持って、また東京での時間を自分は忘れないので…本当にありがとうございました」。自分の言葉で堂々と言葉を紡いだ。
バルセロナ下部組織だった久保は15年、同クラブの規約違反の影響で帰国。東京の下部組織であるU-15(15歳以下)むさしに加入した。プロ生活をスタートさせた東京で、今季は主力として、クラブ記録となる開幕12戦無敗に大きく貢献。久保がいる間に33の勝ち点を積み上げ、チームは首位を快走した。この日は2位の横浜との天王山で逆転勝利。「安心していってこい」という仲間からのメッセージを受け取った。
日本代表として参加した直近の南米選手権(ブラジル)でも抜群の存在感を発揮。チームは2分け1敗で1次リーグ敗退となったものの、得意のドリブルとパスは本気の南米勢相手でも十分に通用した。日本で大きな成長を遂げ、ふたたびスペインへ渡る。
レアル・マドリードのトップチームは7月8日に集合し、カナダでの合宿から米国で親善試合を3試合行う北米ツアーに出発する。久保は今季はBチームでプレーする見通しだが、プレシーズンの同ツアーに帯同する見通しだ。早ければ米国で、銀河系軍団と呼ばれるトップチームの選手との共演の可能性もある。日本では前例のない、久保の新たな挑戦が始まる。