【チェンマイ(タイ)30日=西塚祐司】ミシャサッカーは進化を止めない。コンサドーレ札幌は17日間にわたる第1次タイキャンプを打ち上げた。

就任3年目のミハイロ・ペトロビッチ監督(62)は今季、前線からハイプレスをかける新たな取り組みに挑戦。2月からの国内合宿で「攻める守備」をさらに磨き、アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)出場、そして初の国内3大タイトル奪取を目指す。

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雲一つないタイの青空。ペトロビッチ監督がピッチの真ん中で激しい身ぶり手ぶりで情熱的に指導した。就任3年目のキャンプで取り組んだのは、昨季よりも前線からプレッシャーをかけ相手の陣地でボールを奪い、そのままゴールにつなげること。メンバーは昨季とほぼ変わらないが、進化するべくトライしている。

「相手のバイタルエリア(ペナルティーエリア手前)での仕掛けや連携は我々の強さ。そのゾーンでより多くプレーすれば攻撃のチャンスが増える。キャンプはまずまずの出来だ。練習試合を含めて良い部分とそうでない部分はあった。課題は今後に深く掘り下げていきたい。私は常にできるとプラス思考だ」。

札幌をより強くするためにどうすれば良いか。2年間で攻撃的サッカーのベースを築き上げた。昨年10位だったリーグ戦では、得点(52点・4位)は好調だったが、失点(49点・11位)の多さが響いた。両方で高いレベルを目指すために「攻める守備」に着手した。

「サッカーは表裏一体。守備的な戦いをすれば、これまでの攻撃は難しい。いかに両方を求めてやるかというトライである。攻撃的な部分を落とさず守備をして失点を減らしていく試みだ」。

リスクも背負う。相手陣地に人数を割けば、自陣の守備人数が少なくなる。今回の合宿では対外試合4戦で合計8失点を喫した。特に最終ラインは負担が大きくなることになる。

「1対1の局面が大きくなれば、危険もある。それを恐れてしまっては成長はないだろう。時間はかかるが始めなければ到達できない。準備期間でミスが起こっていい。本番で出ないようにしていかないといけない」。

新しいものを求める。広島の監督として来日した06年は、当時のJリーグでは珍しいポゼッションサッカーを展開した。今では主流のスタイルとなった。

「サッカーと医学は同じ。常に新しいトレンドがある。アンテナを張って学んでどうチームに取り入れるか考えなければ、私も古くさい監督になってしまう。私自身も自分のチームに置き換えて、どう指導したら良いか考えている」。

2月は第2次沖縄キャンプ、第3次熊本キャンプを行い、公式戦開幕となる16日のルヴァン杯アウェー鳥栖戦を迎える。

「開幕するまでの3週間は我々もよく観察していかないといけない。私自身も覚悟を決めている。スリルを味わって欲しいし、私も味わいたい。札幌は何年も開幕戦で勝っていないので、リーグ戦を含めて勝っていきたい」。

○…チームは2グループに分かれて、最終日の練習を行った。ホテル内のプールサイドでは軽いストレッチで調整。全体練習が終わると、MF白井康介(25)がMF荒野拓馬(26)とGKク・ソンユン(25)にプールに投げ込まれた。荒野は「これでキャンプが締まった!」と明るい雰囲気だった。