冬の風物詩ともいわれる全国高校サッカー選手権の開幕を、心待ちにしている人たちがいる。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、今夏開催予定だった全国高校総合体育大会(インターハイ)が史上初の中止。高校野球も春、夏ともに甲子園の中止が決定した。現時点でサッカーの選手権は開催の方向で検討中だが、正式決定はしていない。高校サッカーで最高の舞台に立つことを夢見て、選手は準備を進めている。日刊スポーツでは関西の強豪3校を取材。3年生にとっては、ラストチャンスとなる夢舞台への思いを聞いた。

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屈辱を、成長の糧にする。

今年1月3日。前回大会3回戦で、神戸弘陵は帝京長岡(新潟)に0-5の大敗を喫した。連戦の疲れはあった。前日の2回戦から休む間もなく戦ったためか、前半は0-0で折り返すも、運動量が落ちた後半に、一気に崩れた。

当時のメンバーの約半数が1、2年生だった。選手たちは大敗した夜、悔しさを忘れないようにと携帯の待ち受け画面を0-5と刻まれた試合会場のスコアボードの写真にした。メンバーの1人だった現副主将のMF田中魁人(3年)は「負けた夜は悔しくて眠れませんでした。携帯を見んでも(悔しさを)思い出します」と話した。

新チームとなってからは、連戦を勝ち抜くためプレースピードをより意識して練習に励む。1キロを3分45秒以内で走り切るタイム走を3セット行い、スタミナを強化した。自粛期間中はコーチから出された練習メニューをこなし体力維持に努めた。インターハイ中止はセンバツ高校野球の中止から予想していたというが、冬の選手権について田中は「日本一を取る気持ちです。どうなるかわからないけど、準備をしておこうと思います。(携帯の待ち受けは)優勝したら変えます」と力を込めた。

悔しさを晴らすという思いは、谷純一監督も同じだ。監督室の壁には、1枚の紙が貼られている。日刊スポーツの速報記事をプリントアウトしたものだ。

「神戸弘陵、後半だけで5失点 谷監督『完敗です』」

悔しさは決して忘れない。そうすれば、次のステージと進む肥やしになる。同監督は「いやなことはすぐに忘れたくなりますからね。今年は必ず去年を超える」。視線の先には、冬の選手権での活躍を思い描いていた。(終わり)【南谷竜則】