徳島ヴォルティスのダニエル・ポヤトス監督(42)が、公式戦2戦目で来日初勝利を挙げた。21日のルヴァン杯1次リーグでヴィッセル神戸に1-0で勝利。時間の経過とともに、ベンチ前での身ぶり手ぶりが激しくなり、最後は感激した表情で選手と喜びを分かち合った。

「神戸という素晴らしいチームに、予想以上に難しい試合になった。勝てたのは素直にうれしい。日本に来て勝たないといけないという、重圧があった中での初勝利。仲間を誇りに思っている」

記者会見でスペイン語を話す指揮官。その表情は興奮していた。

ポヤトス監督は母国のRマドリードの下部組織や、ギリシャの名門パナシナイコスで監督を歴任した。徳島を昨季まで4年間指揮した同じスペイン人、ロドリゲス監督(現浦和レッズ監督)の自分たちで主導権を握り、積極的に戦うスタイルを引き継げる人物として、今オフに白羽の矢が立てられた。

新型コロナウイルスの影響による入国制限で、3月末に来日するまでは自宅のあるバルセロナからオンラインでスタッフや選手に指導してきた。入国後は2週間の待機期間を経て、4月15日に練習に合流したばかり。17日のJ1リーグ初陣となった鹿島アントラーズ戦は0-1で惜敗した。

この日は、選手のポジショニングについて細かく指示したという。「守備や攻撃の時も、要求されている立ち位置と違うところがあったので、試合中は指示が多かった。そこは合わせていかないといけない」と決勝点を挙げたFW河田篤秀(28)。

河田の得点の起点となるハイプレスを披露したMF藤田譲瑠チマ(19)は「監督はどんどん守備の部分は前からいって、奪い返して攻撃しようという考え。そこは前半から多かったと思うし、自分が(相手ボールを)奪って得点できた」と胸を張る。新監督にアピールするため、選手も従来と違った刺激があったようだ。

今季開幕から代行指揮を執った甲本偉嗣ヘッドコーチ(41)が、ポヤトス監督の意向に沿い、細かく指導してきたことも大きい。この日の後半は神戸に主導権を握られつつ、自分たちのパスワークでその勢いをうまく、いなした。わずか1点差だったが、試合運びも徳島の計算通りというべき内容だった。

この試合はMF岩尾憲(33)ら多くの主力をベンチ外にし、逆にMF西谷和希(27)やセルビア人DFドゥシャン(32)ら故障明けや出場機会の少ない選手で勝てたことも大きい。

「今日は全員に満足している。特にこれまで出場時間が少なかった選手が力を証明してくれた。けがから戻ってきた西谷らのパフォーマンスにも満足している」とポヤトス監督は言う。

新監督の公式戦初勝利と同時に、徳島にとってはルヴァン杯自体が初勝利になる。前身ナビスコ杯時代の14年、1分け5敗と未勝利に終わり、今回が9試合目でようやく白星をつかむことができた。これで通算1勝2敗とし、1次リーグ突破の望みをつないだ。

J1でも4勝2分け5敗の9位に健闘している徳島は、新監督の合流でさらなるパワーアップを図れそうだ。【横田和幸】