常勝軍団をつくりあげ、今季限りの退任を発表した鹿島アントラーズの鈴木満フットボールダイレクター(FD、64)が27日、オンラインで取材に応じた。前進の住友金属時代からアントラーズに携わり、96年から強化育成課長、00年から強化部長に就任。鹿島の20冠をスタッフとして支えてきた。30年間に及ぶ大役から離れることに、鈴木氏は「一番はほっとしているところがある。ちょっと気持ちが楽になったというか。そういう感覚がありますね」と話した。

他クラブのサポーターから「憎たらしいほど強い」と一目置かれた常勝軍団。だが直近では5年間、国内タイトルから遠ざかり、2シーズン続けて優勝した川崎フロンターレに勝ち点で大差をつけられた。今季は、親会社がメルカリに移行して3季目で「3年というのをなんとなく1つの区切りの思いがあった」。優勝を目指して船出したシーズンだったが、ザーゴ監督を成績不振で途中解任。相馬直樹監督が就任し4位まで順位を上げたが、フロンターレとの差は昨季に続き埋められなかった。鈴木氏は「この2年間の成績不振は責任をすごく感じていたし。ジーコも今季でTD(テクニカルディレクター)を退任すると。その通達もした。相馬監督の退任の通達もした。正直、10月27日、天皇杯で川崎に負けて無冠が決まったその日、終わりにしようとけじめをつけて。リーグの最終戦の前ですかね。小泉さん(小泉文明社長)に意向を伝えてシーズン後に承認をいただいた流れでした」と退任の経緯を説明した。

鹿島に携わった30年。17年12月2日は忘れられない日だ。ジュビロ磐田に引き分け、川崎フロンターレに逆転優勝を許した。「負けた後、次の試合に勝てて初めて消化して次に進める世界。リーグのタイトルとれなくて今でも消化し切れていない。次のリーグで優勝して、あれが初めて忘れられる試合。勝てないで終わってるから、まだ、心に引っかかっているというか。あの試合が今は頭に残っている試合ですね」。歴代の社長はこれまで、すべてタイトルを経験してきたが、小泉社長だけにタイトルをプレゼントできなかったことが心残りだという。

鹿島にはジーコ氏とともに積み上げた哲学、アイデンティティーがある。FDの後を継ぐ吉岡宗重氏をはじめ、鈴木氏は時間をかけてそのアイデンティティーを言語化し伝えてきた自負がある。「チームの結束力・一体感、勝つ事へのこだわり。その2つをコンセプトにやってきた。一体感をどう作るかのノウハウはいろいろあって。後進に伝えることはやってきた」。近年は、補強がかみ合わず、獲得した選手が短期間で移籍するケースも多かった。今後はスカウト体制も充実させるという。「引き続き今のサッカーをアップデートしながら、自分たちの戦い方を確立する。それができれば、どんな選手、選手に求めるものが明確になればスカウトも活動しやすくなる。サッカーを継続してアップデートする作業が出来れば川崎に追いつけるかな」。

来季からはスイス人のレネ・バイラー監督が就任する。鈴木氏とジーコ氏がつくりあげた鹿島が生まれ変わり、国内タイトル獲得へスタートする。