サッカーの元日本代表FW三浦知良(54)が、J2横浜FCから日本フットボールリーグ(JFL)の鈴鹿ポイントゲッターズに期限付き移籍することが11日、決まった。

両クラブが発表した。カズの背番号にちなみ、11日午前11時11分の発表となった。昨季リーグ戦では出場時間1分に終わり、出場機会を求めて移籍を決断。Jクラブとは違った厳しい環境下となるが、監督兼ゼネラルマネジャー(GM)を務める兄泰年氏のもと、道なき道を切り拓いてきた男は原点回帰の再スタートを切る。

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カズが鈴鹿でプロ37年目を踏み出す。16年間在籍した横浜FCを通じ「これまで積み上げてきた数々の思い出や誇りを胸に、新しいチャレンジに踏み出します」。また、鈴鹿を通じ「ピッチの上でクラブの勝利に貢献できるよう努力していきます」と決意した。

完全移籍ではなく、横浜FCからの期限付き移籍。複数の関係者によると、横浜FCは出場機会を求める本人の意向を尊重する一方で、カズとの縁を残すために期限付きにこだわったという。カズは感謝の思いもあり「期限付き」というクラブの意向をくんだ形だ。

昨季のリーグ戦出場はわずか1分。ルヴァン杯や天皇杯も先発することなくシーズンを終え「悔しいし情けない。自分で取り返していかないと」。試合に出たい思いが移籍を後押しした。Jクラブも含め、8クラブのオファーがあった中、選ぶポイントとして「身近に昇格などの目標があるところ」と挙げていた。

鈴鹿は目の前にJ3昇格のチャンスはある。だが昨年末、元役員が八百長の指示や、選手の持続化給付金の不正受給疑惑をSNSで告発した。現在、調査が進められているが、大きな問題にはならない見通しもあってJ3昇格の可能性がある鈴鹿を選択した。

環境はJクラブほど恵まれてはいない。専用グラウンドは建設中(来年完成予定)で、独自のクラブハウスはなく、練習場は場所を転々とする。シャワーも水しか出ない場所もある。それでも高校中退で渡ったブラジル時代を含め、過酷な環境を経験したカズにとって、試合のピッチに立つことが最優先だった。

カズは14年にもリーグ戦で2試合(出場時間4分)の不本意なシーズンを送っている。当時を知る関係者は「14年に移籍を一言も発しなかったカズさんが、移籍を決めたのは本気の表れ」と話す。その翌年は16試合3得点と結果を残した。

鈴鹿の吉田雅一社長は「鈴鹿をサッカーの街にしたい」と意気込んだ。JFL開幕は3月13日の予定で、チームは2月1日に始動。カズは1月中旬に自主トレを開始する。JFLの舞台でカズダンスを踊れるのか。2月で55歳を迎える日本サッカー界のパイオニアの新たな挑戦が始まった。

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◆鈴鹿ポイントゲッターズ 2009年(平21)にFC鈴鹿ランポーレとして創設され、20年2月に現クラブ名に。ほぼアマチュア選手で構成され、午前中に仕事、午後から練習という形態を取る。本拠地は、三重交通Gスポーツの杜鈴鹿など。JFLに昇格した19年は12位、20年は5位、21年は4位。21年2月にJリーグ百年構想クラブに認定され、同年9月にJ3ライセンスも交付された。吉田雅一社長(40)。

◆昨季の鈴鹿は JFLは全17チームで争い、いわきFC、ホンダFC、ヴェルスパ大分に次ぐ、鈴鹿は15勝5分け12敗の4位だった。順位要件(JFL4位以内、かつ百年構想クラブのうち上位2クラブ=鈴鹿はいわき、大分に次ぐ3番目)を満たせず、惜しくもJ3入会は果たせなかった。総得点51は5番目の成績。ベストイレブンなど個人表彰選手はなし。現在は今季の戦力編成中だが、昨季7ゴールでチーム得点王(全体19位)のFWエフライン・リンタロウは、同じJFLのFC大阪移籍が決まっている。

◆今季のJFL 昨季優勝のいわきFCがJ3へ昇格、FC刈谷が地域リーグに降格&新宿がJFL昇格を決め、第24回を迎える今季は昨季より1チーム減の全16チームで争う。既に概要は発表され、3月13日開幕(カード詳細は後日発表)、11月20日の最終節まで2回戦総当たりで1チーム全30試合を戦う。JFLはクラブによってはバス移動が多く、過酷な環境ともいわれる。

◆J3へ昇格(入会)するには (1)Jリーグ百年構想クラブに認定(2)J3ライセンスを交付(3)Jリーグ理事会で入会を承認(4)JFLでの競技成績を満たすこと。JFLの最終順位が4位以内であり、かつJFLに属する百年構想クラブのうち、上位2クラブに入っていることが要件になる。