5月8日は母の日。ジェフユナイテッド市原・千葉レディースのFW大滝麻未(32)は、WEリーグで2人目の“ママさん選手”となった。母になってからのキャリアを「新しい挑戦」ととらえている。

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復帰後初めてのピッチは、最高の舞台だった。2月27日、皇后杯・決勝。大滝は後半33分に途中出場。0-1で敗れはしたが、前線で体を張った。

「みんなが頑張ってつないできてくれた決勝という舞台に立てたのはすごく大きかったし、ありがたかった。みんなに感謝しなきゃいけないというのはすごく感じました」

フランス・リヨン時代にCL優勝経験もある大滝は、昨年11月5日に第1子となる長男を出産。翌月には産後1カ月で練習復帰を果たした。妊娠中のトレーニングについて、インターネットなどで検索しても、まだまだ情報は少ない。5カ月目、6カ月目、7カ月目…。大滝は自身のインスタグラムで、こまめに当時の練習メニューや体の変化を記録してきた。

「私ができたから他の人もできるみたいな、そういう話じゃないと思うんですけど。次に妊娠、出産する選手がいたり、もちろん一般の女性も。これくらいやってる人もいるという一例として、紹介できたらいいな思って、発信していました」

前向きに取り組んできた大滝も、最初から産後復帰を考えていたわけではなかった。きっかけは、イタリア人の夫の一言。「なんで、子ども欲しいからやめるの? やりたいならやればいい」。当たり前のように、両立という選択肢を示してくれた。

チームメートも温かく受け入れてくれた。出産予定日が近づいた頃から、チームは大型連勝。「麻未たちのおかげだよ」と言ってくれ、何度もゆりかごダンスを見せてくれた。さらにクラブは、試合会場の大型ビジョンに大滝のメッセージムービーを流すことを提案。子どもとともに映った元気な姿に、スタジアムに集まったサポーターも祝福した。

けがで長期離脱から復帰した経験はあったが、妊娠・出産からの復帰は全くの別もの。「だんだん良くなっていくのがケガ。妊娠は最初できていて、だんだんできることが減っていくという状況。自分の体調と子どもの健康状態を第一優先にしながら、自分のできることを、その時その時で相談しながらやっていた感じですね」。

起きること全てが初めての経験。選手として、母として未知の挑戦にも、大滝は「ワクワク」と話す。今の目標は、出産前の自分を超えることだ。「これから自分がどういうふうに変わっていくんだろうっていうワクワク、期待みたいなものは、すごく新鮮な気持ちであります。挑戦し続けることの価値を学んだかなと思います」。

これまでの自分と違うのは「頑張る理由が一つ増えた」ということ。かけがえのない存在に勇気づけられながら、新たな自分を探し続ける。

◆大滝麻未(おおたき・あみ)1989年(平元)7月28日、神奈川県平塚市生まれ。小学1年時にサッカーを始め、中学高校時代は横須賀シーガルズに所属。早大を経て、フランス・リヨンに入団。12年にCL優勝メンバーとなった。その後浦和、フランス・EAギャンガンなどを経て15年に一時引退。17年に現役復帰し、19年から千葉。174センチ、56キロ。血液型O。FIFAマスター修了。