浦和時代「大槻組長」と親しまれたJ2ザスパクサツ群馬の大槻毅監督(49)が古巣を撃破した。

天皇杯3回戦で前回大会覇者のJ1浦和に1-0で勝利。前半35分にFW高木彰人(24)が奪った先制点を守り抜いた。12~20年まで浦和に所属し、指揮官も務めた。オールバックのスーツ姿で「組長」とサポーターからも愛された。風貌こそ、少し変わったが、変わらない熱量で選手を鼓舞し続け、下克上を果たした。J1連覇中の川崎F、現在リーグ戦首位の横浜がJ2勢に敗れる波乱もあった。

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オールバックのスーツ姿ではない。ツーブロックのジャージー姿に変わった「大槻組長」が、群馬のサポーターへ何度も両手の拳を掲げた。かつて尽力した古巣を泣かせる白星。

「やぶりました。でも力の差は感じています。選手が頑張りました。以上です」

防戦一方の時間を耐え忍び、ワンチャンスをものにした。前半35分、右サイドをDF岡本が一気に駆け上がり、FW高木が右足で振り抜いた。直後は喜びにわいた指揮官だったが、すぐさま勝負師の顔に戻った。

「大槻組長」と親しまれた風貌は少し変わった。しかし、鋭い眼光、選手を鼓舞する声は変わらない。試合前には持ち前の言葉の力で、選手のモチベーションを最大限まで高めていた。

「浦和という素晴らしいクラブに注目が集まる中で、対戦相手としてレッズに対してどんなプレーをしたか、サポーターや観客に記憶を残せたらいいね、と」

スタメン発表時に大槻監督の名前がコールされると、浦和のサポーターも拍手を送った。12~20年の長きにわたって浦和に心血をそそいだ姿を、多くの人が記憶に刻んでいる。ユース監督時代には浦和の主力となったMF関根らを育成。監督としてもトップチームの危機も救ったが、2年前、志半ばで慣れ親しんだクラブを去った。

「長くいたクラブ。お互いに戦うことを楽しみにしていました。僕にとって敵ではないし、いつでもいい思いをさせてくれたクラブ。リスペクトしています。サポーターも素晴らしい」。愛する古巣を相手に熱戦を繰り広げた。【磯綾乃】

○…前回大会覇者の浦和が3回戦で姿を消した。徹底的に守る相手に苦しみ、クロスバーに当たるなど運にも恵まれなかった。ロドリゲス監督は「本当に1つのディテールが全ての結果を左右する大会だが、細かいところでやられてしまった」と肩を落とした。主将のGK西川は「若い選手が多い中でこういう経験は無駄ではないと思う」と懸命に前を向いた。