クラブOBの岩政大樹新監督(40)が就任した鹿島アントラーズが、アビスパ福岡を2-0で下し、6試合ぶりの白星を手にした。選手起用、戦術、交代と岩政色を出し、先制の場面では得点のきっかけとなったFW鈴木優磨に抱きつかれ、押し倒される一幕も。監督初陣を白星で飾り、順位も暫定ながら2位に浮上。新・鹿島の道へ最高のスタートを切った。

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鹿島が鹿島らしく勝った。岩政新監督の指揮でわずか1週間。縦一辺倒の攻撃から、ボールを握り、つなぐスタイルに変化し、したたかな戦い方が復活した。サポーターから岩政コールを受け、白星を祝福された新指揮官は「うれしさの方が強い。代行とは違い、自分の中でプレッシャーも感じていた。そこをうまく、1つ目は乗り切れたところでホッとしている」と率直な思いを吐露した。

就任から1週間で選手に言い続けたことは「自分の個性、持っている情熱をまず出すことから始めてくれ。その上で僕が整える」。選手の個性と力を信じるからこそだった。

その原点は教師だった両親にある。教師の仕事はトップを教えるのでなく下を救うこと。自身もサッカー選手でなく、教師を志していた時期もあった。指導者として、東大や上武大でサッカーを指導する中で「みんなJリーガーになれるんじゃないか」など、選手を過大評価する自分に気付いた。「最初はいいのかなと思ったけど、それを本気で本気で思えるのは自分の武器だと割り切った。世の中、すべて愛」。ミーティングでも選手に、その思いを伝えた。

信頼を託された選手が燃えないわけがない。相手の対策も、事細やかに準備し、鹿島らしくしたたかに無失点で抑え、結果につなげた。先発したFW土居は「戦術もわかりやすくかみ砕いて話してくれる。感覚的にボールを触って、人と人とのつながりがあるサッカーをしたと前半は特に感じました」と手応えを口にした。岩政監督の愛を一身に受けた鹿島イレブンが、新生・鹿島への大きな一歩を踏み出した。【岩田千代巳】