FC東京のMF松木玖生(19)が、初めて対峙(たいじ)した元日本代表MF香川真司(34)をうならせた。ホームでのC大阪戦にフル出場し、中盤で何度もマッチアップ。雨の中で激しく体を当て、意地をぶつけた。試合は1-2で敗れたが、惜しいミドルシュートを放つなど存在感は十分。U-20日本代表のエース格である19歳を、香川だけでなく、視察したU-22韓国代表の黄善洪監督(54)も絶賛した。

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松木が、試合中に思わぬ声をかけられた。

「移籍の話はどうだ?」

話しかけてきたのは、この日幾度となくやりあっていた香川。後半30分に選手交代でプレーが止まった時だった。試合中の、仰天のやりとり。軽い抱擁をして試合が再開すると、再び激しく体をぶつけ合った。

会話について松木は、笑顔で「秘密で」とけむに巻いた。一方の香川は「初めて直接プレーをして、可能性があってすごくいい選手。タイミングがあれば(海外で)チャレンジしてほしいと思った」と、声をかけた際の思いを明かした。日本代表では国際Aマッチ97試合に出場。プレミアリーグの名門マンチェスターUでもプレーした名手が、思わず聞いてしまうだけの存在感を、19歳は放っていた。

ピッチでの初対戦を終えた松木は「個ではがす能力が高い。人と人の連係で崩すところなど盗みたい」と、ベテランから刺激を受けた。学ぶだけでなく、この日も持ち味の運動量と球際の強さ、パンチ力をしっかり発揮。それでも前半にミドルシュートを好セーブされる場面もあり、「決定力を高めていかないと」と満足の表情はなかった。

熟練のパスワークで攻撃を操る香川に猛然とプレスをかけ、倒して反則を取られても気後れしなかった。東京DF長友と香川のベテラン対決は実現しなかったが、降りしきる雨の中、見応えある戦いを演じてみせた。試合後は固い握手をかわした2人。将来の日本代表候補が存在感を示し、大先輩をうならせた。【岡崎悠利】