筑波大MF徳永涼(1年/前橋育英)が国士舘大戦でリーグ戦初先発を飾り、存在感を発揮した。
攻撃では、積極的にボールに触って長短のパスでゲームを作り、守備では球際やスピードに優れる国士舘大相手に、中盤で体を張った。1年生とは思えない落ち着きでボランチのポジションから試合をコントロールした。
前橋育英3年時に高校総体で優勝し、日本高校選抜、U-18日本代表、U-19日本代表など輝かしい経歴で入学したが、激しいポジション争いの中、なかなか出番に恵まれなかった。徳永は、開学50周年記念と重なるこの日の試合には、並々ならぬ思いをもって臨んでいた。ポジションの被るヴィッセル神戸内定の山内翔主将(4年/神戸U-18)が中国・杭州で開催中のアジア大会に臨むU-22日本代表に招集されて欠場することが決まっており、この試合に照準を合わせていたのだった。
後半の失点に絡んだ部分は課題としつつ「この試合に向けてすごく準備してきた。練習量だったり、やることっていうのを整理して、自分の中ですごく真面目に取り組んできて、もうここでアピールしないと終わるぐらいの気持ちでやってたんで、そういう意味では、よかったかなとは思います」と少しホッとした表情をみせた。
今季は4月15日の第3節国士舘大で初めてベンチ入り。同29日の第4節明大戦の後半ロスタイム1分でデビューを果たした。6月末の「アミノバイタルカップ2023」では先発出場を経験するもリーグ戦では後半残りわずかな場面での出場が続いた。そんな中、意識したのは、自分の特徴を仲間に知ってもらうことだった。
「本当にコミュニケーションが大事で、自分がしたいプレーっていうのを周りにわかってもらわないといけないし、逆に周りの特徴を見て、自分がどうやって使ってあげようかなっていうのを考えないといけない。LINEとかでも練習中の映像を送ったりして、先輩に対しても、すごくコミュニケーションをとりまくって、やっていく中で自分のほしいタイミングでボールが来たり、自分の絵が周りと合うようになって来てるなと感じていたんで、それができたかなって思います」
夏休み期間に入ると、午前の全体練習、その後の自主練に加えて、一度休息を挟んでから個人練習をする「二部練」を開始。自分に足りない部分を整理して、重点的に取り組み、成長した。高校時代はあまり取り組んでいなかったフィジカルトレーニングも始めた。食事もこだわって、自炊をしているという。出場時間が増えない中での心持ちを聞くと、「単純にどこに置かれようとうまくなりたいっていうところと、あとは日本代表で海外とか経験して、ここでできることを目標にしてなくて、やっぱ常に世界でどう戦うかを考えてるんで、今出られないっていう現実があったとしても、そこで戦うためにどういう生活を日々送るかっていうモチベーションで行動しました」とよどみなく答えた。
現在9得点を記録している同期の内野航太郎(横浜Y)や先発出場の機会が増えている池谷銀姿郎(横浜FC・Y)の活躍に焦りがなかったわけではない。「内野が活躍したり銀(姿郎)がスタメンで出るようになって悔しさとか焦りっていうのは、そこは必ずあるものだと思いますけど、それをうまく自分のポジティブなパワーに変えるところは意識してます」。
アジア大会が終わって山内が帰ってきても、あっさりとポジションを譲る気はない。「代わりで出るんじゃなくて、自分もいるよっていうは、コーチだったり監督だったり、周りの選手のみんなにも示したい。やっぱここでも差を見せれるぞっていうところを証明したい」。そう強く言い切った。世界を見据える若きボランチは、大学でも着実に成長を遂げていた。【佐藤成】