J1首位に立ったFC町田ゼルビアの藤田晋社長(51)が6日、X(旧ツイッター)を更新し、一部で報じられた黒田剛監督(54)のパワハラ疑惑に対して超長文で反論した。その上でクラブ公式サイトに、特別調査員会による調査報告書の【公表版】を全文公開した。
この日の川崎フロンターレ戦キックオフ前、光文社のニュースサイト「SmartFLASH」が、黒田監督による選手やスタッフへのパワーハラスメント疑惑を伝えた。
町田は、FLASH編集部から届いた質問状に対して「クラブとは利害関係のない特別調査委員会を設置」した。山岡総合法律事務所の山岡通浩弁護士と、同所属の2弁護士で構成されるもので、黒田監督、強化部の原靖フットボールダイレクター、パワハラ被害を訴えるA~C各氏に加え、D~Qまでの全17人の選手やコーチ、スタッフへのヒアリングを基に調査報告書が作成され、ホームページにアップされた。
質問事項と、それに対する特別調査委の認定事実【2】要旨は、以下の通り(全て原文まま)。
【質問事項2】2024年6月ごろ、当時貴クラブのコーチだったB氏に対し、練習中に黒田監督が「俺の言うことが聞けないなら、お前なんてもういらない」などと、B氏を選手らの前で怒鳴りつけたと伺っております。その後、黒田監督の指示で、B氏は試合中ベンチに入れず、遠征先でも前泊させないなどの処遇にしたと伺っておりますが、こうしたことは事実でしょうか。
【特別調査委の認定事実2】黒田監督が、令和6年6月頃、当時当クラブのコーチであったB氏(以下「Bコーチ」という。)に対し、練習中に選手らの前で「俺が言ったのと全然違うじゃないか。」「俺の言うことを聞けないのか。」という趣旨の発言を強い口調でした事実は認められるが、「俺の言うことがきけないなら、お前なんてもういらない。」と怒鳴りつけた事実は認められない。黒田監督の上記発言はパワー・ハラスメントには該当しない。また、黒田監督の指示で、Bコーチは試合中ベンチに入れず、遠征先でも前泊させないなどの処遇にした事実は認められるが、それは8月31日の浦和レッズ戦で失点したことが原因であり、9月以降のことである。黒田監督の上記指示は、パワー・ハラスメントには該当しない。
【事実認定の補足説明2】黒田監督、原FD、Bコーチ、H氏(以下「Hコーチ」という。)、K氏のヒアリング結果によれば、以下の事実を認めることができる。
Bコーチは、令和6年6月当時、当クラブのゴールキーパーコーチ(ゴールキーパーやセットプレー等の守備を担当するコーチのこと。以下「GKコーチ」という。)であったが、セットプレーの練習中に、選手に対し、黒田監督の指導内容に反するような指導をしたため、黒田監督が、Bコーチに対し、「俺が言ったのと全然違うじゃないか。」「俺の言うことを聞けないのか。」等と強い口調で言った。これに対し、Bコーチは、自分が黒田監督の指導どおり選手を指導したつもりであったため、「僕も同じようなことを言ったんですが。」と弁解したが、黒田監督は収まらず、5分程度同じ趣旨の発言を強い口調で繰り返した(なお、ヒアリング対象者の中に、一人だけ、大声できついことを言っていたので、「怒鳴った」といってもよいと思うと供述した者がいたが、他の複数の供述に比べ特に信用すべきであるという事情が認められなかったため、採用しなかった)。
練習が終了した後、Bコーチは、謝罪の言葉を述べながら、スタッフルームに戻る黒田監督に付いて行き、さらに、スタッフルームで、黒田監督に対し、「監督の意図と違うことを言ったつもりはないんですが、すみませんでした。」等と繰り返し謝罪した。このとき、Bコーチは、黒田監督が椅子に座っており、自分が直立していると黒田監督を見下ろすことになってしまうため、自ら膝立ち(床に膝を付けるが、臀部は浮かせた状態であった。)の状態で謝罪を続けた。当初黒田監督は「お前、もう出て行ってくれ。」等と言っていたものの、Bコーチがスタッフルームで約30分程度繰り返し謝罪を続けたため、黒田監督は「二度とないぞ。」と述べ、Bコーチの謝罪を受け入れた。
その後、Bコーチはベンチ入りを続けていたが、8月31日の浦和レッズ戦で失点したことが原因で、9月以降、ベンチ入りを外され、代わりにHコーチがベンチ入りすることとなった。
その後、Bコーチは、午前中、遠征に同行しない選手らをホームグラウンドで指導し、夕方から遠征先に駆け付けることになった(なお、これがベンチ入りを外れた主な理由であると述べたヒアリング対象者もいたが、当委員会としては、Bコーチがベンチ入りを外されたのは、浦和レッズ戦で失点したことが原因であり、上記理由は付随的な理由に過ぎないと判断した)。
【評価(パワー・ハラスメント該当性)】以上のとおり、黒田監督がBコーチに対し、「俺が言ったのと全然違うじゃないか。」「俺の言うことを聞けないのか。」との趣旨の発言を強い口調でした事実(以下「本件発言」という。)、及び、浦和レッズ戦の失点を理由に試合中ベンチに入れない等の処遇をした事実(以下「本件行為」という。)が認められるため、本件発言及び本件行為のパワー・ハラスメント該当性について、上記第5に記載したパワー・ハラスメントの認定基準に則り、以下検討する。
【ア 優越的な関係について】監督は、チームとしての戦略や指導方針等を策定した上で、それを各コーチに伝達し、コーチはこれら監督の指示に従って選手らを指導するのであるから、監督がコーチよりも優越的な地位にあることは明らかであり、黒田監督とBコーチとの間には優越的な関係が認められる。
【イ 業務上必要かつ相当な範囲であるか否かについての(ア)コーチの業務について】プロサッカーチームにおけるGKコーチ業務の目的は、チームが試合に勝ち、成績を上げるために、監督の方針に従って、個々のプレー内容を選手に指導することにある。その意味で、GKコーチは、第一に監督の方針を正しく理解し、第二にかかる監督の方針を個々のプレーに落とし込み、第三にその内容を選手に伝達することが求められるが、さらに、プロである以上、試合に勝つ、失点を最小限に抑えるといった結果が求められる。
【イ 業務上必要かつ相当な範囲であるか否かについての(イ)本件発言について】本件発言は、黒田監督が、セットプレーの練習中に、Bコーチが自分の指示内容を正確な表現で選手に伝達していないと考えたため、なされたものであり、その目的が不当であるとはいえない。
発言内容や表現方法は、「俺が言ったのと全然違うじゃないか。」「俺の言うことを聞けないのか。」と強い口調で言ったというものであり、それよりは、冷静な態度で、黒田監督の考える方針を再度伝えたり、Bコーチが誤っている点を指摘したりすることが望ましかったとはいえるが、一方で、コーチによる指導内容に対する指摘を超えて、コーチ自身の人格否定に至っているという事情はなく、また、発言時間は5分程度であり、業務の遂行に関する必要以上に長時間に亘る厳しい叱責を繰り返し行ったという事情はないから、社会通念に照らして許容される範囲を超えているとはいえない。
なお、その後、スタッフルームにおいて、黒田監督がBコーチに対し、「お前出て行ってくれ。」と発言しているが、コーチの業務を全うしなかった者が、スタッフルームまで付いてくることに不快感を感じ、このような発言をすることはやむを得ないものである。当該発言も、人格否定に至っているという事情等はないから、社会通念に照らして許容される範囲を超えているとはいえない。なお、その後30分間続けて、「お前出て行ってくれ。」と発言しているものの、それはBコーチが黒田監督の許しを得るまで退室しなかったためであり、Bコーチはいつでも自ら退室してそのような状況から逃れることはできたのであるから、黒田監督の発言が執拗に継続してなされたと評価すべきではない。
【イ 業務上必要かつ相当な範囲であるか否かについての(ウ)本件行為について】本件行為は、浦和レッズ戦で、Bコーチが指導を担当していたセットプレーにおいて失点したことが理由である。
上記のとおり、GKコーチ業務の目的はあくまでチームが試合に勝つために、失点を最小限に抑えることである以上、失点を生じさせたGKコーチに試合の最前線の指導を任せられないと監督が判断した上で別のコーチと変更することは必然である。
また、その方法も、当クラブから直ちに脱退させたり、業務を全く与えなかったりするというものではなく、遠征に同行しない選手らの練習の指導を任せたり、午後の試合の場合には遠征に途中合流させたりするというものであって、社会通念に照らして許容される範囲を超えているとはいえない。
【ウ 就業環境が害されるか否かについて】上記の通り、GKコーチの業務は選手への指導を通してチームが試合で勝つために失点を最小限に抑えることを目的としている以上、GKコーチの業務内容が全うされていないときに、監督によって監督の指示に従うように指導されたり、より適切な人員と交替させられたりすることは必然である。
より適切な人員と交替させられ、新たな役割を与えられたならば(本件では、遠征に参加しない選手をホームグラウンドで指導するという役割を与えられている)、再びベンチ入りさせてもらうよう、その役割を全うすべきであって、交替させられたからといって、直ちに看過できない程度の支障が生じ、就業環境が害されるとはいえない。
【エ まとめ】以上から、本件発言及び本件行為はパワー・ハラスメントに該当しない。



