日刊スポーツでは17年以来となる清武兄弟対談が実現した。元日本代表MFの兄弘嗣(36=J2大分)と、今季から選手兼監督を務めた弟功暉(34=関西2部おこしやす京都)が取材に応じ、それぞれの現状を赤裸々に語った。強い思いを持って現役を続ける兄と、先に指導者として歩み出した弟の苦悩ややりがいはどんなところにあるのか。仲の良い兄弟が自然体で語り合った。【取材・構成=永田淳】
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弟の功暉は24年に地域リーグに初挑戦し、25年は選手兼監督としてチームをけん引。チームを関西2部から1部へ昇格させた。
功暉 最初は練習環境や、真夏の昼間にも試合がある過酷なスケジュールの中でやっている選手たちがすごいなと感じた。選手兼監督は、将来指導者になりたい思いがあって、昨冬にB級ライセンスを取りに行く前にチームを指導させてもらった。それを見ていた社長から、やってくれないかと話を受けた。
弘嗣 いい経験をさせてもらえるんだなって思ったけど、すごく難しい立場だろうから、自分の弟がやることに不安はあった。どうなるんやろうって。
功暉 自分もまだまだプレーできる状態なのが、難しくしていたところはある。全体を俯瞰(ふかん)的に見る必要があるけど、自分も練習に入ってプレーしないといけない。でも中に入ると全体が見えにくいし、動かないと自分のコンディションが上がらない。その葛藤はあった。それでも選手がポジティブに思ってくれて、前期リーグを全勝で終えられたのは大きかった。
弘嗣 昨年末から映像を見まくっていたよな。かなりやる気だななと感じた。心配もあったけど、前半戦負けなし。それはすごいなと。試合も見たけど、関西2部でも強度は高いし、うまい選手もいた。選手の個性を生かしながら、いいサッカーをしていた。
選手兼監督と聞いて、多くの人が気になるのは「交代、俺」を使う機会はあるのか。率直な疑問を弟にぶつけてみた。
功暉 それは実際何回かやった。自分自身をいかに客観的に見るかを大事にしながら。うまくいかなかった時は、次の試合で自分をメンバーから外したこともあった(笑い)。
弘嗣 その判断は難しいな(笑い)。やっぱり試合の日は大変?
功暉 本当に忙しい。試合会場に着いたら、まず集合してミーティング。それが終わったら、自分は監督としてマッチコーディネーションミーティングに出て、メンバー表を提出して、終わったらウオーミングアップ。ピッチにマーカーを置いて、着替えて、自分もアップする。試合直前のミーティングして、自分も準備して、監督として入るっていう流れだから、もう本当に時間ない(笑い)。
弘嗣 自分もいずれ指導の道には進むと思うけど、そんなリアルを聞くと今はまだ…(笑い)。C級、B級の講習に功暉と一緒に行ったけど、指導はすごく難しい。チームも選手もある程度できあがっている中で教えるのはパワーがいるし、勇気も必要。僕には最初から上のカテゴリーはできない。個性の塊のような選手ばかりで、生意気。自分自身がそうだから、こういう選手に接するのは嫌(笑い)。僕はまだ選手だけだから、功暉が先に行っているなと思う。
今季古巣の大分へ移籍した兄は、序盤の4試合の出場にとどまり、地元のファンにプレーを見せることができていない。9月には左ヒラメ筋肉離れと発表され、その苦悩を吐露した。
弘嗣 今年3月にけがをして、リハビリ中に何度か繰り返してしまった。正直、引退もあるのかと考えることもあった。このまま終わりかなって。でも治らないけがじゃないし、まだイメージ通りのプレーもできる。動けるし、感覚も鈍っていないから、諦められない。心のどこかで「またいつかは」と思っていたクラブでプレーできているし、続けたい思いが強い。
功暉 それでも明るいよね。
弘嗣 それはそうかな。「けがをしてこんなに明るい人はいない」と言われる。けがをした時は落ち込んだりもするけど、負のオーラは伝染すると思っているから。若い頃はけがをしたらへこんでいたし、プレーでうまくいかなくて考え込む性格だったけど、年齢を重ねたり、代表で長谷部(誠)さんを見たりして、前向きに取り組んだり、ポジティブな声かけをするように変わった。
多くの同世代が引退していく中、兄は地元大分への思いを抱いて現役、弟は指導者として歩んでいく。
弘嗣 ベテランになって、いろんなものが見えてくる中で、トリニータが元気や勇気を与える存在にならないといけないと強く思うようになっている。やっぱり結果で示す必要がある。僕はまだプレーヤーなので、そこで貢献したい。
功暉 現役を続けるには契約がないとできないわけだから、シンプルにすごいこと。最近はベテランを切って若手を使う風潮があるけど、その中で弘嗣が培ってきたものが評価されている。ここまで続けられる人は本当にひと握り。僕は32歳で行き先がなくてJを離れたから、そのすごさは感じる。
弘嗣 将来は指導者になると思うけど、今はまだ選手として頑張りたい。
功暉 僕は今回指導者の話をもらって、この1年で覚悟ができた。Jに挑戦できるぐらいのチームまで育てていきたいし、上のカテゴリーに引っ張られるような選手を育てていきたい。



