「FIFA20」のチャリティーゲーム大会で優勝したレアル・マドリードのアセンシオ(2019年7月20日撮影)
「FIFA20」のチャリティーゲーム大会で優勝したレアル・マドリードのアセンシオ(2019年7月20日撮影)

スペイン政府による3月14日の緊急事態宣言により、レアル・マドリードやバルセロナの選手なども含め、スペイン全住民が30日間の自宅待機となる中、早くも2週間が経過した。

新型コロナウイルスの感染拡大がいまだ止まることを知らないスペインでは、14日の時点で5753人(死亡136人)だった感染者数は、28日には72248人(死亡5690人)と、わずか2週間で感染者12倍、死亡者41倍以上に増えている。

この事態は当然、サッカー界にも大きな影響を及ぼしており、スペイン1部リーグは当初、第28節と第29節、2部リーグは第32節と第33節のみの延期が決定していたが、状況が好転しなかったため、ラ・リーガ(スペインリーグ)とスペインサッカー連盟は23日に「スペイン政府と州政府の管轄当局が健康面に何の害もなく再開できると判断するまでプロサッカーリーグを中断する」と無期限延期を発表し、今も再開のめどは立っていない。

また、財政面で大打撃を受けたバルセロナが選手を含むクラブ全スタッフの給与削減を発表すると、エスパニョールやアトレチコ・マドリードもそれに追随した。一方、Rマドリードは正式発表していないが、経済面が安定しているため給与削減を行わないことが各メディアに報じられている。

このままリーグ戦が再開されない場合、スペインでは6億7880万ユーロ(約814億5600万円)の収益が失われると見積もられている。さらにシーズンがプレーされずに終了した場合、欧州サッカー界全体の損失は70億ユーロ(8400億円)を超えるとのことだ。

サッカーという日常の娯楽がなくなり、日々暗い話題が続く中でも、さすがサッカー大国スペインと言ったところだろうか、皆が自宅でいろいろな形でサッカーを楽しんでいる。選手たちは自宅での個人トレーニングやエクササイズの模様をSNSで公開し、ゲームソフト「FIFA20」のチャリティーゲーム大会では1部リーグの選手たちが所属チームで参加し、全世界で16万人以上が視聴する中、Rマドリードのアセンシオが見事に優勝を果たしている。

そしてラ・リーガが主催した新型コロナウイルス撲滅に向けたチャリティーコンサートは、テレビやYouTube、SNSなどで全世界に生中継され、スペイン語圏の人気アーティストやラ・リーガ所属のサッカー選手がボランティアで参加し、自分たちが今できることで助け合い、この困難な事態を乗り越えようとしている。さらに、無料放送のサッカー番組は過去のワールドカップ決勝やクラシコなど、懐かしい名勝負を放映し、自宅にこもるほかないサッカーファンに娯楽を提供している。

現時点では感染者、死亡者がともに増える一方で収まる気配がないため、リーグ戦再開の時期は不明のままである。そんな中、スペインサッカー連盟のルイス・ルビアレス会長は「我々はシーズンを終了させなければいけないという考えを持っているし、最後までやり遂げる必要があるが、5月の再開は不可能だと思う。我々は、降格圏から脱出できる可能性のあるチーム、そして昇格できる可能性のあるチームにチャンスを与えなければならない。国が回復し健康が保証された時がリーグ戦再開のタイミングになるだろう」と見解を語っている。

一方、スペインのメディアはさまざまな要素を踏まえ、リーグ戦再開に向けたプランを考案している。

1つ目は5月半ばに再開して6月30日まで、もしくは7月15日までに終了するというプラン。ラ・リーガはそれが実現可能で、必要なら各クラブが1週間に3試合戦う準備もできると見ている。一方、観衆の有無はすべて健康被害の恐れがあるかどうかにかかってくる。おそらく、これがシーズンを滞りなく終わらせるためにベストなプランであるが、可能性は低いだろう。

2つ目は少し後に再開し、8~9月に終了するというもの。このプランはより健康面の安全を確保することができるだろう。しかし来シーズンのスケジュールの再編成および、マジョルカに期限付き移籍で所属する久保建英のように、今年6月30日で契約の切れる選手が100名以上いるため、特例的な契約延長が必要になってくる。

3つ目は9月にリーグ戦を再開するというもの。日を重ねるほど新型コロナウイルスの脅威がなくなるという見解を元にしたプランである。今シーズンの損失を大幅に軽減することができる一方、来シーズンの抜本的改革、そして選手の契約延長問題を解決する必要がある。

いずれにしても、すべては新型コロナウイルスの終息、そして選手やサポーターの健康面の安全確保がリーグ戦再開の大前提となってくる。非常事態宣言が解ける4月11日まで残すところあと2週間、すべてはその後に決まることになる。【高橋智行】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」)

マジョルカ久保建英(2019年12月18日撮影・PIKO)
マジョルカ久保建英(2019年12月18日撮影・PIKO)