今季前人未到の7大会に挑むレアル・マドリードは8月14日に最初のタイトルを獲得し“エムバペ時代”の幕を開けた。
■センターバックが唯一の懸念材料
Rマドリードの現在のメンバーは22人。今夏、中盤の要クロースが引退し、キャプテンのナチョがチームを去った一方、フランス代表FWエムバペと18歳の若きブラジル代表FWエンドリッキが加入し、スペイン人DFバジェホが期限付き移籍から戻ってきた。
ナチョ退団と昨年12月に前十字靭帯断裂の重傷を負ったアラバ復帰の遅れにより、センターバックが唯一の懸念材料となっているが、それ以外のポジションは概ねバランスよくカバーされているという印象だ。
特に攻撃陣は世界最高の呼び声が高い。ドイツの移籍情報サイト「トランスファー・マーケット」による選手の市場価値ランキングで、エムバペ、ビニシウス、ベリンガムがマンチェスター・シティーFWハーランドと並び、1億8000万ユーロ(約288億円)でトップに立っていることはその証しのひとつと言えるだろう。
今季、かつて成功を収めた4-3-3にシステムが戻る中、ロドリゴ、ブラヒム・ギュレルのいる右ウイングが唯一オーバーブッキングにある。しかし、この3人は複数のポジションをこなせるポリバレントな能力を有しているため、何らかの形で出番を得られるはずだ。
また、ビニシウスとの共存が懸念されるエムバペについてアンチェロッティ監督は、「問題ない。重要なのはFW陣の機動力だ」と、攻撃陣が機能する上で前線の流動性が鍵になることを強調していた。
■今季初戦でアタランタに2-0
Rマドリードはアメリカでプレシーズンマッチ3試合(ミラン、バルセロナ、チェルシー)を終えた後、8月14日に今季最初の公式戦を迎え、ワルシャワ(ポーランド)で行われた欧州スーパーカップで欧州リーグ王者のアタランタと対戦した。
欧州選手権や南米選手権参加により、主力の半数以上がチーム合流からわずか1週間たらずと、準備期間がほとんどない状況の中、アンチェロッティ監督はRマドリードデビュー戦となったエムバペをセンターフォワードで先発起用した。
前半はアタランタのインテンシティーの高いプレーに苦しめられ、連携がうまくいかなかったが、後半に入り攻撃陣が大爆発。ベリンガムがゲームを作り、ビニシウスが左サイドで素晴らしい突破力を見せ、バルベルデとエムバペのRマドリード初得点により2-0で勝利した。これによりRマドリードは同大会史上最多となる6度目の優勝を成し遂げ、アンチェロッティ監督は最初の難関を見事パスした。
まだ初戦を終えたばかりでうまくフィットしているとは言い難いが、スペインメディアは新たな攻撃の中心となる選手たちを、かつて圧倒的な攻撃力を誇った“BBC”(ベイル、ベンゼマ、クリスティアーノ・ロナウド)にちなんで“BMV”(ベリンガム、エムバペ、ビニシウス)と命名し、大きな期待を寄せている。
エムバペ加入により、チーム内の雰囲気がおかしくなることを不安視されているが、アンチェロッティ監督は「非常に健全でクリーンな雰囲気があると思う。ロッカールームには王子も王も存在しない」と大きな問題がないことを強調した。
デビュー戦で初得点を記録したエムバペも試合後、「僕たちはRマドリードだ。自分が年間50ゴールを決めるかどうかは関係ない。勝つ必要がある」とチームの成功が一番であることを訴えていた。
また、この試合でエムバペと並び注目となったのはベリンガムのポジションだ。昨季はトップ下でゴールを量産したが、アタランタ戦ではクロースの抜けた左インサイドハーフに入り、ドルトムント時代に近い形でプレーした。エムバペの得点をアシストし、MVPに輝いた後、「どこでプレーしようと構わない。今日は左に少し下がったけど、サッカーは流動的なものだし、相手次第だ。チームに貢献できるなら僕はどのポジションでも快適に感じられる」と気にしていない様子だった。
■新設クラブW杯が過密日程に拍車
各国代表のエースクラスを揃え、誰もが羨む陣容を整えているRマドリードは今季、すでにタイトルを獲得した欧州スーパーカップを皮切りに、これまで体験したことがない7大会および、最大で公式戦72試合を戦うという極度の過密日程に臨むことになる。
その理由はシーズンの最後にアメリカで32チーム参加のクラブワールドカップが開催されるため。これに伴い、新たなインターコンチネンタルカップが12月に行われる(※6大陸の王者が参加。Rマドリードはスーパーシードで決勝から)。
Rマドリードの過去最多が2000-01年シーズンの66試合だったことを考えると、72試合という数字がどれだけ異常なものかが分かる。さらに代表戦が10試合あるため、主力選手の負担は想像を絶するものとなるだろう。すなわち、Rマドリードが今季再び成功を収めるためには、11カ月にわたる長いシーズンに伴うけがや疲労が大きな障害となる。
これに対して当然、酷使される側の選手たちも黙ってはいない。カルバハルがアタランタ戦前日、「クラブワールドカップやFIFA(国際サッカー連盟)の日程を挟みながら72試合を戦うなんて不可能だ。試合のレベルが下がってしまう」と苦言を呈すと、バルベルデも「ダニ(カルバハル)と同意見だ」と同調していた。
スペインリーグ、国王杯、スペイン・スーパーカップ、欧州チャンピオンズリーグ、インターコンチネンタルカップ、クラブワールドカップ、欧州スーパーカップの7冠達成に向け、新時代を迎えた若きスター軍団を率いるアンチェロッティ監督がどのようにチームをマネージメントし、この問題を解決するのか、その手腕に注目が集まる。
・今季7大会に挑むRマドリードのメンバー22人(システム:4-3-3)
GK:クルトワ、ルニン
右サイドバック:カルバハル、ルーカス・バスケス
右センターバック:ミリトン、バジェホ
左センターバック:リュディガー、アラバ
左サイドバック:メンディ、フラン・ガルシア
右インサイドハーフ:バルベルデ、モドリッチ
アンカー:チュアメニ、カマビンガ
左インサイドハーフ:ベリンガム、セバージョス
右ウイング:ロドリゴ、ブラヒム・ディアス、ギュレル
センターフォワード:エムバペ、エンドリッキ
左ウイング:ビニシウス
【高橋智行】(ニッカンスポーツコム/サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」)


