レアル・マドリードが窮地に追い込まれている。
アウェーで行われた欧州チャンピオンズリーグ(CL)準々決勝第1戦でアーセナルに0-3と惨敗し、目標の1つである2大会連続、通算16度目の優勝への道が閉ざされるそうになっている。
■昨年同時期より9試合も多い55試合
欧州王者は今季、最大で72試合に達する過酷なシーズンをスタートするにあたり、夏の補強でフランス代表FWエムバペと、18歳の若きブラジル代表FWエンドリッキをチームに迎えた。これで前人未到の7冠達成を目指すための体制が整ったはずだった。
だが、今季ここまでに戦った公式戦53試合の成績は35勝7分け11敗。バルセロナに2度大敗し、敗北数は昨季全体を9試合上回っている。期待に反するような不安定な成績となっている一番大きな原因として、近年大問題となっている過密日程が挙げられる。
Rマドリードは昨季の欧州王者になったことで2大会増え、大会形式が刷新されたこととプレーオフに回ったことで欧州CLが4試合増加した。昨季の同時期に比べて9試合も多く、過密日程に対する不満がすでに噴出していた昨季全体の55試合にあと2試合で到達する。このペースは異常としか言いようがない。さらにシーズン終了直後にアメリカ開催のクラブワールドカップが控えている。
Rマドリードのレギュラー陣はほぼ各国の代表選手で構成されている。昨夏の欧州選手権や南米選手権に参加した選手は体を休ませる暇もなく、疲労困憊のまま今季に突入した。中でもバルベルデはここまでチーム最多の50試合、代表戦を含めると57試合に出場しているが、このままではいつ大けがを負ってしまってもおかしくない。
プレシーズンでまともに調整できなかったことは連携面の問題に加え、当然のことながらけが人多発という事態を引き起こした。守備の要であるカルバハルとミリトンを今季絶望の重傷で失ったことで、チームは精神的にも大きな痛手を負った。
昨年末のインターコンチネンタルカップ(カタール)、年初めのスペイン・スーパーカップ(サウジアラビア)への参加で長距離移動を余儀なくされたことも、選手たちの体を蝕んでいる。
特に酷い日程だったのは、年明けから3月の国際Aマッチ期間までの2カ月半だろう。毎週平日開催の試合があり、22連戦、3・3日ごとに1試合という過酷なスケジュールを過ごした。さらにその直後の代表戦では近年最多の16人が招集された。この状況下で良好なフィジカルコンディションを保ちつつ、まともなパフォーマンスを発揮することなど不可能だ。
Rマドリードはこの後、最低12試合、最大19試合が残されているため、クラブ史上の公式戦最多記録である00-01年シーズンの66試合を上回る可能性は非常に高い。
■欧州舞台で過去3度3点差から逆転勝利
惨敗したアーセナル戦は、ここまでの過密日程によるフィジカル面の問題が色濃く反映される結果となった。加えてチーム全体の走行距離の少なさやコンパクトなブロックを作れず機能していないこと、全体のバランスの悪さ、プレスの欠如、交代の遅さ、ビニシウスのパフォーマンス低下およびエムバペとの連携不足、さらにクロース引退の穴を埋められていないことまで、さまざまな原因をスペインメディアに指摘された。
多くの問題点を抱えながら、Rマドリードは16日、サンティアゴ・ベルナベウにアーセナルを迎えて第2戦を戦う。英国のスポーツ分析会社「Opta」が伝えたRマドリードの準決勝進出の可能性は4%と非常に低い。
しかし、アーセナル戦直後、ベリンガムは「逆転できるチームがあるとすれば、それはRマドリードだ」と勝利への望みはいっさい捨てていない。普通なら3点差の時点で不可能だと思われるが、直近11大会で5回優勝という実績を残しているだけあって、Rマドリードには「もしかしたら」と皆に期待させるものがある。
Rマドリードが3点差以上をひっくり返したことは過去、欧州の舞台で3度あった。
1度目は75-76年シーズンの欧州チャンピオンズカップ2回戦ダービー・カウンティ戦(アウェーの第1戦1-4、ホームの第2戦5-1)。
2度目は84-85年シーズンのUEFAカップ3回戦アンデルレヒト戦(アウェーの第1戦0-3、ホームの第2戦6-1)。
最後にその偉業を成し遂げたのは40年近く遡る、85-86年シーズンのUEFAカップ3回戦ボルシアMG戦だった(アウェーの第1戦1-5、ホームの第2戦4-0。アウェーゴール・ルールにより勝ち抜き決定)。
そして近年特に何度も奇跡を起こしている。記憶に新しいのは21-22年シーズンの決勝トーナメントだろう。パリ・サンジェルマン、チェルシー、マンチェスター・シティー相手に次々と大逆転劇を収め、14度目の欧州制覇を見事に果たしてみせた。
16日のアーセナルはRマドリードにとって今季ここまでの戦いの中で最も重要な試合となることは間違いない。フィジカルコンディションは大いに懸念されるが、クロースに最も近い役割を果たせるセバージョスがけがから回復したことは朗報となる。
非常に難しいミッションに挑まなければならず、第1戦の問題点をどこまで修正できるかが鍵となるが、アンチェロッティ監督は欧州CL史上最多5度の優勝を誇る手腕の持ち主だ。サポーターはRマドリードがサンティアゴ・ベルナベウで再び奇跡を起こし“Noche Magica(魔法のような夜)”を再現することを大いに期待している。
【高橋智行】(ニッカンスポーツコム/サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」)


