日本代表MF遠藤航が所属するリバプールが、土壇場のゴールで勝ち点1を手にした。遠藤は出番がなかったが、話題をさらったのはコロンビア人FWルイス・ディアス(26)だった。

後半35分に均衡を破られたリバプールは、3分後にルイス・ディアスをピッチに送り込んだ。先月28日にコロンビアで父が反政府武装組織の民族解放軍(ELN)に誘拐され、所在不明となっている。事件以降、試合から外れていたが「チームの一員になりたい」とクロップ監督に志願してのベンチ入りだった。

そして、アディショナルタイム5分。右サイドからMFエリオットが入れたクロスボールに、ルイス・ディアスがファーサイドに飛び込み、頭でゴールネットを揺らした。起死回生の同点ゴールを決めると、ユニホームをまくり上げ、アンダーシャツに記した「LIBERTAD PARA PAPA(パパを解放して!)」のメッセージを見せた。世界中にこの映像は流れることになった。

殊勲のゴールを挙げた男は試合後、英BBCラジオ5の取材マイクに「母、兄弟、そして私は絶望し、不安で、今の気持ちを表現する言葉がありません。この苦しみが終わるのは、父が私たちのもとに帰ってきてからです。このつらい待ち時間を終わらせるため、すぐに父を解放してください」と懇願した。

また、クロップ監督は「この試合に最もふさわしい人物が同点ゴールを決めたのはとても素晴らしかった。我々はコロンビアからのニュースをひたすら待っている。彼は我々と一緒に過ごすことを決断し、何もできないからこそ気晴らしが必要だった。ただ唯一の気分転換は本当にニュースしかない」と熱く語り、ルイス・ディアスの父が解放されることを願った。

ルイス・ディアスの渾身(こんしん)のパフォーマンスはELNに届くのか-。国際社会が見守ることになった。

◆コロンビア情勢 50年以上も内戦状態にあり、政府軍、左翼ゲリラ、極右民兵が対立。そこに資金源となる麻薬問題も絡んでいる。キューバ革命に影響を受け、1964年に左翼ゲリラ組織が誕生。最大組織だったコロンビア革命軍(FARC)は16年11月に政府と和平合意に署名し、合法政党に。一方で民族解放軍(ELN)は、ベネズエラとの国境にまたがる山岳地帯のセラニア・デル・ペリハを拠点に推定2500人のメンバーがおり、現在も政府軍と戦っている。資金源となる身代金目的の誘拐事件は以前に比べて減少。それでも21年に160件、22年も183件ほどが記録されている(外務省ホームページ参照)。

◆ルイス・ディアス 1997年1月13日生まれ、コロンビア・バランカス出身。バランキージャFC、アトレチコ・ジュニオール、FCポルトを経て22年1月にリバプール移籍。コロンビア代表で43試合9得点。昨年のワールドカップ(W杯)カタール大会は膝を負傷して欠場。180センチ、73キロ。