陸上の世界選手権(8月、ロンドン)代表選考会を兼ねた日本選手権が今日23日、大阪市のヤンマースタジアム長居で開幕する。10日に追い風参考ながら9秒94を記録した男子100メートルの多田修平(20=関学大)は22日、兵庫・西宮市内の同大学で最終調整。桐生祥秀(21=東洋大)山県亮太(25=セイコーホールディングス)ケンブリッジ飛鳥(24=ナイキ)ら強敵と同じ舞台で、日本人初の9秒台と頂点に挑む。同種目は23日に予選と準決勝、明日24日に決勝が行われる。

 桐生、山県、ケンブリッジがそろった本番会場での会見に、多田の姿はなかった。10日の日本学生個人選手権準決勝で追い風4・5メートルの参考記録ながら9秒94、決勝では日本歴代7位タイの10秒08を記録。注目度急上昇だが、法学部に籍を置く3年生は関学大での授業を優先。慣れ親しんだ練習場で決戦に備えた。

 日本陸連を通じて発表したコメントには、自信がにじむ。「結構好調な状態で今来ているので、タイムは出せるなと思っています。最大の目標は世界選手権に行くことなので、最低でも絶対3位以内に入って、最高で優勝できるような走りをしたいです」。世界選手権の参加標準記録(10秒12)は突破済み。表彰台に上がり、初の代表をつかむことに集中している。

 「いつも通り」は多田の背中を押す。大阪桐蔭時代に指導した花牟禮(はなむれ)武監督(46)は「多田にとって長居はホーム」という。高校時代、部員が1人800円ずつ出し合い、年に数回、4時間の貸し切り練習をした場所だ。

 特徴の硬いトラックは、神奈川・平塚で走った10日と同じで好材料。恩師も「下の反発を上に逃がさなければ、いい走りができる」と期待する。明日24日の21歳の誕生日は、最高の笑顔で迎える。【松本航】