2時間15分53秒でゴールした男子マラソンの川内優輝(30=埼玉県庁)は取材エリアに現れると、ミュージカル俳優のように声を張り、身ぶり手ぶりを交えながら言った。

 「怒鳴りつけてくれた沿道のおじさん方に感謝しています」

 今大会は一般フルマラソンの部に出場。それは女子のトップランナーが走る代表チャレンジャーの部の30分後にスタートする。レース前、川内は招待選手であり、2年前の大会で全体2位だった吉田香織(36=TEAM R×L)を抜くことを目標に掲げていた。

 男女の違いはあれ、30分差大きい。調子も悪く、向かい風も強かった。アップダウンの大きい終盤。姿が見えず、諦めそうになる状況で、沿道から多くの声が飛んできたという。「吉田を抜け!」「吉田を抜かないと目標達成できないぞ」。

 埼玉県出身で、現在も埼玉県庁に勤務する。地元の声援を受けた川内は「苦しいけど、吉田さんを抜かなきゃ」と力が出たという。その後、吉田を抜き去り、57秒早くフィニッシュラインを駆け抜けた。今月5日にはフランスでフルマラソンに出場し2時間15分2秒、そして来月3日には福岡国際に出場するが、力を出し尽くした。ゴール後は膝に手を付き、苦悶(くもん)の表情を浮かべた。係員の助けをかりて、トイレに駆け込んだ。戻ってくるとコーラをがぶ飲みするなどして復活。川内ワールド全開で取材に応じた。

 福岡国際へ向けては「日本の若手と海外選手の中でどういう順位が取れるかが大事。タイムか順位かどちらかはいい結果を残したい」と力を込めていた。