17年世界選手権男子400メートルリレー銅メダリストの多田修平(21=関学大)が決勝進出を決めた。

 1組に登場し、向かい風0・3メートルの状況下、10秒31で3着。17年に自己ベスト10秒07を記録し、今大会は「ナンバーワンしかいらない」と記された告知ポスターやプログラムの表紙に桐生祥秀、山県亮太、ケンブリッジ飛鳥と起用されていた。

 「決勝に行くことだけを考えて走った。走りの内容は全然ダメ」と振り返りながらも、「準決勝は(ライバルに)大差で負けている。3人に食らいついて、優勝を目指したい」。「大会の顔」の1人が、決勝(23日)でのガチンコ対決に歩みを進めた。

 もがき苦しむ中で、望みをつないだレースだった。前週、16日の日本学生個人選手権予選では10秒32(追い風1・6メートル)。「頑張らないと足が回らない。今の状態だと、何本走っても良くならない」と準決勝前に棄権することを決断した。

 今季の目標は8月のアジア大会(ジャカルタ)優勝と、9秒台。2月には米国に渡り、スタートの改善に取り組んだ。昨季は序盤の加速でライバルに大きく差をつける一方、終盤で逆転を許すシーンが多かった。そのため「最高速度が今まで50~60メートル(地点)だったので、それをもうちょっと後ろにしたい。70メートル(地点)ぐらいまで後ろにできたら」と理想を掲げていた。

 取り組んだのはスタート直後、足を回転させる「ピッチ」重視から、地面を蹴ることにこだわる走法。「ピッチを回さない分、体力は残るので、(その分)中盤になっていくとピッチが回っていくと思う」。だが、レースをこなすうちに、新走法に違和感を覚えるようになった。4月中旬からは「合っているスタートで勝負する」と原点回帰を決断。だが、追い風参考ながら9秒94をマークし、一躍その名を全国区にした昨季のフォームは、簡単に取り戻せていない。この日も「スムーズに加速できていない。足のさばき方ですね。ピッチが失われている」と反省を口にする中で、地力を見せた格好だ。

 17年9月には桐生祥秀が記録した日本人初の9秒台を、同じレースを走りながら間近で見た。「桐生さんが昨年出したのを目の前で見たので、悔しさがある」。そう語り続けている関学ボーイは、がむしゃらにライバルへと食らいつく。