00年シドニー・オリンピック(五輪)陸上女子マラソン金メダルの高橋尚子さんらを育成した名指導者の小出義雄さんが24日午前8時5分、千葉県内の病院で亡くなった。80歳だった。有森裕子さん、高橋さんらを五輪のメダリストに導いた名伯楽が平成の終わりとともに、この世を去った。

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合宿所に取材に行くと、小出監督から唐突に「いい選手が入ったんだよ~。何より足首がいい」などと言われることがよくあった。私に向かって話していたが、監督の声が聞こえるところに必ず、その選手がいた。「今度、取材してやってな、がはは」と言うと、その選手はうれしそうに笑っていた。こうやって選手をその気にさせるのだと、感心させられた。自宅におじゃました時、こんな話も聞いた。

「昨日の夜は週刊誌の記者が来た。事情を聴いたら『どうしても、記事を書かなきゃいけない』と言うんだ。何ページ分か聞いたら、4ページだと。彼も仕事で大変なんだ。4ページ分、しゃべってやったよ、がはは」

当時、一部週刊誌にはスキャンダルも狙われていたが、突っぱねるどころか味方にしてしまった。

人の心をグッとつかむ、名伯楽だった。【01、02、08~10年陸上担当=佐々木一郎】