ダイヤモンドリーグは約1カ月の中断期間が明け、終盤戦がスタートする。今大会と24日の第12戦パリ大会終了時のダイヤモンドリーグポイントで、ファイナル(13戦チューリヒと14戦ブリュッセルの2大会)への出場選手が決まる。ボーダーラインの選手にとっては正念場の大会だ。

日本からは男子100メートルに日本人3人目の9秒台を出した小池祐貴(24=住友電工)、400メートル障害に安部孝駿(27=ヤマダ電機)、走り高跳びに戸辺直人(27=JAL)と3選手が出場する。3人ともファイナル出場の可能性があるだけに、今大会でのポイントに注目したい。

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小池は9秒98で4位に食い込んだ第10戦のロンドン大会(7月20日)に続く参戦で、バーミンガム大会もロンドン大会と同様に予選と決勝が行われる。

小池は9月27日開幕の世界陸上ドーハ大会に向けて重要な大会と位置づけている。14日の羽田空港出発時に「しっかり力を出せば決勝にいけると思う。(決勝で)真ん中以上の順位なら、自信を持って世界選手権に臨める。今回の結果次第で世界選手権(の決勝が)が夢とかでなく、手が届くものとして考えていける」と話した。

優勝候補の筆頭は今季世界最高の9秒81を持ち、全米選手権も制したクリスチャン・コールマン(23=米国)で、ロンドン大会優勝者でシーズンベスト9秒93のアカニ・シンビネ(25=南アフリカ)が続く。全米選手権2位のマイケル・ロジャース(34=米国)も安定した強さを見せている。

小池としてはロンドン大会3位と先着されたヨハン・ブレーク(29=ジャマイカ)、同5位のアンドレ・ドグラッセ(24=カナダ)、200メートルで7月にアジア新を出した謝震業(26=中国)らとの競り合いに持ち込みたい。記録は目標としていないが、このメンバーで3~5位に入れば自身2度目の9秒台も出るだろう。

次戦パリ大会の男子100メートルは、ダイヤモンドリーグポイントが付かない種目として行われる。つまりバーミンガム大会でファイナル出場者8人が確定するのだ。小池は5位だったオスロ大会(6月13日)と合わせて9点を持ち、現時点で8位につけている。

23点のコールマン、19点のシンビネがシーズン累計ポイントの1・2位で、すでにファイナル進出を決めている。17点のロジャースの進出も確定的だろう。小池は累計10点の謝や、自身より下位にいるブレークやドグラッセに勝てばファイナル進出が有力になる。目標とする「真ん中以上の順位」をとれば、日本人初の100メートルでのダイヤモンドリーグファイナル進出が決まりそうだ。

400メートル障害の安部は累計7点で現在9位につけている。

バーミンガムには今季世界最高のカルステン・ワルホルム(23=ノルウェー)ら上位陣がエントリーしてこなかった。シーズンベストでは48秒80の安部より上の選手が4人いるが、競り合うことはできる。仮に3位に入って6点を上積みできれば、累計13点となり4位の選手に並ぶ。安部にとっては累計得点の順位を上げる絶好のチャンスである。

走り高跳びの戸辺は累計7点で現時点の7位。

バーミンガムには戸辺も含めて累計得点8位以内の選手が5人も出場するが、屋外のシーズンベストでは2メートル33のイリア・イバニュク(26=ロシア。中立国として出場)がトップ。戸辺が2月にドイツでマークした日本記録の2メートル35(今季室内世界最高)の方が記録としては上で、戸辺には優勝のチャンスがある。

400メートル障害と走り高跳びは、次戦のパリ大会でも行われるため今大会でファイナル進出選手全員が決定するわけではない。だが、シリーズ終盤で日本人選手が3人もファイナル進出の可能性を残しているのは、ダイヤモンドリーグが発足して初めてのこと。期待を持って注目したい。

◆ダイヤモンドリーグはIAAF(国際陸上競技連盟)が主催する単日、または2日間開催では最高カテゴリーの競技会シリーズ。2010年に発足し、2016年までは年間総合ポイントで各種目のツアーチャンピオンを決定していた。2017年からシステムが変更され、ファイナル大会出場者を決めるクオリファイリング大会として12大会を実施し、16種目ずつを行うファイナル2大会の優勝者がダイヤモンドリーグ(年間)優勝者となるチャンピオンシップ形式になった。各クオリファイリング大会の種目別賞金は3万ドル(1位1万ドル~8位1000ドル)で、各種目は年間4~6大会で実施される。各大会のポイント(1位8点~8位1点)合計の上位選手がファイナル大会に進出(種目によって異なり7人または8人、または12人)。ファイナル大会の種目別賞金は10万ドル(1位5万ドル~8位2000ドル)で、年間優勝者には賞金5万ドルとダイヤモンド入りトロフィーが贈呈されるのに加え、今年9月開幕の世界陸上への出場権が与えられる。ほとんどの種目が予選なしの一発決勝で行われるため、緊張感あるレースがスピーディーに続く。また、オリンピックや世界陸上のように1種目3人という国ごとの出場人数制限がないため、ジャマイカ、アメリカ勢がそろう短距離種目や、アフリカ勢が多数出場する中・長距離種目など、五輪&世界陸上よりレベルが高くなるケースもある。