東京オリンピック(五輪)代表の一山麻緒(23=ワコール)が2時間21分11秒で優勝した。

野口みずきさんが持つ2時間19分12秒の日本記録には及ばなかったが、好記録での優勝だった。

新型コロナウイルス感染拡大を受け、市街地での開催ではなく、公園内を約15周するコースに変更された。海外からの選手もおらず、無観客で、男子選手がペースメーカーを務める異例の形式で開催されたレースを、野口みずきさんはどう見たか-。

   ◇   ◇   ◇

20キロぐらいまでの一山選手を見て、私も「日本記録を破られるのでは」と手に汗握った。25キロ以降は苦しさも出たが、冷静で、フォームの崩れも少なかった。

私は現役時代、公道の方が走りやすかった。ずっと集中するのは疲れる。日本記録が出たベルリンでは華やかなサンバの応援で元気になり、きつい時に景色を楽しんだ。今回、25キロからペースが落ちた際に気分転換の材料がなかったのも影響しているとは思うが、彼女はその部分よりもスピード持久力を課題に挙げていた。2時間21分11秒でも「すごい」と思ったが、日本記録を出せなかった悔しさを口にしていた。向上心が頼もしく、このスピード感を経験できたのも大きい。

前田選手も含め、五輪に向けて「調整力」が問われる。私もアテネ五輪は風邪気味で、ベルリンでは右足甲を疲労骨折しながらのレースだった。体が100%で臨めるレースはないと思うし、その中で心身をいい方向へと持っていく気持ちが必要だ。ましてやコロナ禍で状況変化に応じた瞬発力や、モチベーションが大事になる。2人とも若い選手。切磋琢磨(せっさたくま)しながら、世界との距離を縮めてほしい。(04年アテネ五輪金メダリスト)