高橋尚子(31=スカイネットアジア航空)が4日、アテネ五輪最終選考会、名古屋国際女子マラソン(3月14日)の出場回避を正式に表明した。マネジメント事務所のIMG東京を通じ、文書で発表した。1月の大阪国際で好結果が連発した場合は再挑戦の可能性もあったが、記録は伸びず、選考でも優位に立ったと確信したようだ。佐倉アスリートクラブの小出義雄代表とも相談し、8月の五輪本番を万全で迎えるための決断を下した。

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やっぱり金メダルが欲しかった。高橋が選んだのは一直線でアテネへ進む道だった。「小出代表と協議を重ねた上、名古屋国際を見送る決定を下しました」。徳之島合宿中のため、事務所を通じ文書で発表した。昨年11月の東京国際で2時間27分台の2位と失速した。今年1月の大阪国際で上位陣の記録が伸びず、選考では優位に立ったとはいえ100%代表に選出される保証はない。それでも名古屋を回避する。

すべては金メダルのための決断だ。仮に名古屋で勝てば代表は確実。だが五輪は1年間で3レース目となり、負担が大きすぎる。小出代表は言い続けた。「名古屋に出たら五輪では入賞が精いっぱいだよ」。出場しても勝てないのなら意味がない。名古屋で土佐、大南敬らが好記録を出せば、落選の可能性もゼロではない。金メダルか、落選か。2つの可能性をはらむ決断だったが、高橋は前者に賭けた。

優位な立場であることは間違いない。すでに内定した野口。大阪国際を制した坂本は当確とされる。残り1枠。気温24度と真夏のような状況だった東京だが、高橋の記録は大阪で2位の千葉を上回った。さらにシドニー五輪で金、日本最高記録というNO・1の実績。季節風が吹き、記録が出にくいといわれる名古屋で、高橋の実績をも押さえ込むような記録を出すことは難しい。

小出代表は「(選考の)3月15日までは何も言えねぇよ。選んでくれるのを待つしかない。徳之島でじっくりやる」と話した。早くも代表入りを信じ、8月の五輪本番を見据えたメニューを進める方針で、夏前にはシドニー五輪前も行った米ボルダーで高地トレに入る。10日には高橋と小出代表がそろって会見を開き、決断の経緯を説明する。アテネ五輪に向けたひと足早い決意表明になりそうだ。【牧野真治】