女子100メートルで日本記録を持つ福島千里(32=セイコー)は東京五輪出場が崖っぷちな立場になった。

決勝は12秒33(向かい風1・8メートル)の5位。予選は12秒19(向かい風0・6メートル)の2着だった。悪条件もあって、まだ権利を取っていない日本選手権(大阪・6月24~27日)の参加に最低限必要な11秒84に届かず。6月6日の布勢スプリントが、東京五輪の最終選考会を兼ねた日本選手権出場を懸けたラストチャンスになる見込みだ。

「オリンピックは最大の目標」というのは、まったくぶれない。とはいえ、残された時間は少なく、追い込まれた。「まずは日本選手権の土俵に立たなくては何を言っても外野になる」。日本選手権に出場するには、最低でも100メートルで11秒84、200メートルならば、24秒22をクリアする必要がある。

女子短距離界をけん引してきた福島も、ここ数年はアキレス腱(けん)などの故障が続く。4月29日の織田記念も左太もも裏痛で欠場していた。痛みの不安はなくなっているが、練習は十分に積めていなかった。「12秒台は風を考慮しても、絶対的にスピードが低い」と振り返った。

日本選手権に出場できても、東京五輪に個人で出るには、参加標準記録は11秒15をクリアする必要がある。高い壁が待つ。日本記録11秒21を持っている元絶対女王は「一番近いところにいたはず。挑戦と経験をミックスしてやっていければ」。その挑戦の1つとして、春からは順大大学院のスポーツ健康科学研究科に進学し、医科学など専門的な知識を学び、競技に生かしている。「進化、変化が必要になる」。もがきながら、必死に模索している。

闘志は衰えていない。「120%で戻るつもり」。そう弱音は一切吐かなかった。