選手層が厚い青学大が歴代2位の5時間22分6秒で、2年ぶりの往路優勝を果たした。

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3区太田蒼生(あおい)と5区若林宏樹の1年生コンビが貢献するなど、原晋監督(54)の采配がズバリ的中。区間賞は1人もいなかったが、総合力で勝ち切った。2位帝京大に2分37秒差、連覇を狙う3位駒大に3分28秒差をつけ、2年ぶり6度目の総合優勝に向けて大きく前進した。

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いきなり山登りの5区に抜てきされた1年生の若林が期待に応えた。主将の飯田貴之(4年)からトップでタスキを受け取ると、終盤まで区間記録ペースの快走。笑顔でガッツポーズしながら、ゴールテープを切った。区間3位の好走で、2位との差をさらに1分広げた。原監督は「若さあふれる走りだった。『若の神』を与えることができる」と絶賛。「来年は『山の神』を目指して頑張ってほしい」とエールを送った。

2位でタスキを受けた3区の太田も、1年生と思えない試合巧者ぶりを発揮した。東京国際大の日本人エース、丹所健(3年)に序盤で追い付かれたが、しっかりつく。中盤に丹所とともに首位駒大を捉え、終盤で一気にスパート。並走していた丹所を置き去り、トップでタスキリレーした。

青学大には、練習から体のケアなど科学的な根拠に基づき、教えていく原監督考案の選手育成法「青学メソッド」がある。監督は1年生2人を起用した根拠を「青学大には成長するメソッドがある。故障なく夏合宿を乗り切り、秋のハーフマラソンなどできちんと結果を出していた。そのメカニズムをきっちりこなした2人なので、何ら不安なく、スタートに立たせた」と、優勝を重ねて練られたメソッドの成果を強調した。

箱根の区間配置は熟考を経て決める。毎日、自宅のトイレに貼ったカレンダーの升目に、1~10区までの配置をボールペンで書き込む。「ずっと365日やってますよ。性格なども見ながらね。イメージがわいてくるんですよ」。選手寮の寮母を務める美穂夫人から「書くならきれいに書いて」と苦言を呈されながら「また変わったね」と指摘されるほどメンバーをよく変更するが、12月の合宿後にほぼ固定される。

「カギはいつの時代も山だけど、今年は特に山登り。5区の出来が勝負を分ける」と展開を読んでいた。若林は出雲は4区6位、全日本大学駅伝は6区12位。1万メートルはチーム上位の実力、山登りへの適性、好調さなどを熟考した上で、キーマンに若林を指名した。

登録選手全16人が1万メートル28分台は史上初。原監督も「史上最強のチーム」と胸を張りながらも、今季は出雲、全日本大学駅伝はいずれも2位。全日本について「パズルの組み合わせのミス」と悔やんだが、箱根往路は采配がズバリ決まった。「パワフル大作戦、パート2です」。復路も制し、完全優勝を目指す。【近藤由美子】

◆青学大と1年生 青学大は過去5回優勝しているが、その時に出場した1年生は3人しかいない。15年4区で、田村和希が区間新の快走で初優勝に貢献。16年の復路6区で、小野田勇次が区間2位の活躍で総合連覇に貢献。20年には岸本大紀が青学大史上初めて1年生で2区を任された。1時間7分3秒の好記録で6人抜きし、5時間21分16秒の新記録による往路優勝に勢いを与えた。ただ過去5回の全50区間で3人のみ。今回の往路5区間だけで2人の1年生の活躍。強豪校の激しい争いの中だけに、いかに偉業かが分かる。