24年パリ五輪の新星が、国立の舞台で躍動した。男子110メートル障害で村竹ラシッド(順大3年)が、13秒34(追い風0・1メートル)で優勝した。世界選手権(7月、米オレゴン州)の参加標準記録に0秒02差と肉薄する好タイムだった。トーゴ出身の父を持つ20歳は、昨年の日本選手権で13秒28をマークして脚光。順大で2学年先輩の泉谷駿介(住友電工)の後を追い、今季の世界デビューを期す。

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村竹が弾むようにハードルを飛び越えていく。外国人選手2人の猛追も振り切りフィニッシュ。スクリーンに映し出される正式タイムを確認すると、両手で頭を抱えて悔しがった。「この大会で標準切ることを目標していたので納得していない」。それでも4月の日本学生個人、織田記念に続いて3連勝。存在感は日に日に強まっている。

名を広めたのが、東京五輪の選考会となった昨年6月の日本選手権だった。予選で日本歴代3位の13秒28を記録。決勝は「人生初」のフライングでまさかの失格となったが、陸上界に衝撃を与えるには十分だった。

順大では、日本記録保持者の泉谷と同じ環境で練習する。世界を見据えて昨年から肉体改造に着手。体重を4キロアップさせ「上半身と下半身のバランスが釣り合ってきた」。師事する山崎一彦氏からは“猫背”を指摘され、矯正中。「スタートするときに背中を意識するようになって、だんだんはまってきた」。助言をスポンジのように吸収する。

同学年には、東京五輪の3000メートル障害で日本人初の入賞を果たした三浦龍司がいる。「世界で活躍しているのは響くものがある」。泉谷はもちろん、刺激をもらう機会も多い。

今月19日から始まる関東インカレ(国立競技場)、6月の日本選手権(大阪)では、今度こそ参加標準記録を切りたい。「早く切って一安心したい。関東インカレは今日と同じ舞台。(国立の)雰囲気は嫌でも気合が入る」。世界への切符が目の前にある。【佐藤礼征】

◆村竹ラシッド(むらたけ・らしっど)2002年(平14)2月6日、千葉県松戸市生まれ。跳躍競技の経験があるというトーゴ人の父を持つ。松戸市立相模台小5年に陸上を始め、松戸一中1年からハードル種目に専念。松戸国際高3年時には110メートル障害で高校総体を制覇。同種目の良さは「普通の走りと違うのが楽しいから」。小学生の頃はサッカー、水泳も習っていた。179センチ、76キロ。

○…女子1500メートルで東京五輪8位入賞の田中は、海外選手とのスパート勝負に屈して4位だった。残り200メートルで先頭に立ったが及ばず「レースとしては良くなかった」。それでも日本人トップの4分7秒53。4月のレース後に違和感を覚えた右太ももについては「少し張りがある状態だけど、走る分には感じない。ほぼ忘れるくらいには戻っている」と回復を強調した。

○…女子やり投げで昨夏の東京五輪代表で日本記録(66メートル00)保持者の北口が、1回目に63メートル93をマークして優勝した。今夏の世界選手権の参加標準記録64メートル00に7センチ足りなかったが、東京五輪銅メダルのバーバー(オーストラリア)を上回った。「以前のようにすべての力を使い切って投げた感じではなかったので、もっといくと思います」。6月の日本選手権までに64メートル超えを目指す。

○…男子3000メートル障害で昨夏の東京五輪で7位入賞の三浦が、格の違いを見せつけた。残り1000メートルからギアを切り替えて集団を飛び出すと、追いすがるキプラガット(ケニア)に5秒近い大差をつけて圧勝した。タイムは自分の持つ8分9秒92の日本記録に及ばないが、終盤まで集団で走るプランだったため想定内。すでに世界選手権の参加標準記録も突破済み。「世界ではゲームメークの力が必要になる。その意味で今日はうまく機能した」と冷静にレースを分析した。

 

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