第100回箱根駅伝(来年1月2、3日)に、関西の強豪・立命館大が挑戦する。

同陸上部長距離パート(山菅善樹監督)の田中裕介コーチ(37)は2日、箱根予選会(10月14日、東京都内)出場の考えを明かした。全国の大学に門戸が開かれた箱根について「誰もやっていないところにチャレンジしたい」。関東以外から挑戦を公式に表明したのは立命館大が“第1号”となった。箱根を創設した金栗四三が掲げた「箱根から世界へ」の夢は記念大会を通じ、全国に波及する。

  ◇  ◇  ◇

ついに、関東以外から箱根に挑む大学が現れた。田中コーチは「挑戦することは人生において大きな糧になる。誰もやっていないところにチャレンジしたい。学生にとって絶好の機会」と全国の大学に先駆けて公式に表明した。関西の雄、立命館大が箱根を目指す。

箱根は、関東学生連盟の主催で関東の大学が競う駅伝だが、第100回は記念大会として全国に門戸が開かれた。しかし1区間が20キロ以上(10区間217・1キロ)で、学生3大駅伝とされる出雲(6区間45・1キロ)、全日本(8区間106・8キロ)に比べて距離が圧倒的に長い。予選会も最低10人がハーフマラソン(21・0975キロ)を走る必要がある。箱根とそれ以外の駅伝は、練習が全くの別物になるため、関東以外から挑戦することはハードルが高い、とみられていた。

昨年10月に就任した田中コーチは、早大陸上部OBで箱根を目標に努力する意味を知る。立命館大は出雲に19度、全日本に34度も出場した強豪。さらに箱根には、64年に招待参加の経験がある。

ただ走るのは部員。同コーチは同12月から丁寧に部員の意見を聞いてきた。「出ても厳しい状況であることは確か。ただ厳しいか、厳しくないかという要素をのぞけば、ほぼ全員がチャレンジしたい、という意見だった」。2月中に出場の方針を固めて「歴史を変える」というスローガンとともに、同部の公式HPにおいて出場を正式発表した。

同部は新入生も含めて長距離パートで選手約20人。同コーチは「全員で予選会の練習を始めるよりも、故障がないように1人1人の特性を見ながらやる」。夏ごろには20キロの距離に挑む選手が出てくる流れだ。

今季の目標として10月9日の出雲、11月5日の全日本での8位入賞も掲げる。出雲と箱根予選会は中4日と強行日程だが、同コーチは「選手の状態を見極めるが、エースと言われるような選手たちは(予選会に)出していきたい」とした。

“マラソンの父”金栗は「世界に通用するランナー」を育てるため、1920年(大9)に第1回大会を開いた。関東勢とそれ以外の実力差は大きい。全国で争う昨年11月の全日本は優勝の駒大から15位日大まですべて関東勢。16位関学大、17位大経大、18位立命館大だった。それでも箱根に挑戦する大学が増えれば、まだ決まっていない101回大会以降における全国化継続の機運も、金栗の夢も、全国に広がっていく。

◆立命館大陸上部 1927年(昭2)に創部。36年ベルリン五輪400メートル障害代表の市原正雄らを輩出。長距離パートは山菅善樹監督。関西学生対校駅伝(丹後大学駅伝=8区間84.5キロ)は21年まで4連覇、昨年は2位だった。女子部は92年に創部。駅伝は全日本大学女子駅伝で優勝10度を誇り、昨年も2位に入っている。

◆箱根駅伝予選会 例年10月に開催。東京・立川市の陸上自衛隊立川駐屯地から国営昭和記念公園までの21・0975キロを走る。各校で14人までエントリー可能。10~12人が出場して上位10人の所要合計タイムの少ない10校が本戦に出場する。エントリー選手全員が1万メートルで34分0秒以内の公認記録を持っていることが条件。出場資格は「関東学生連盟」の男子登録者だったが、今年は「日本学生連合」の男子登録者となり、全国に門戸が開かれた。本戦では前年大会で上位10位以内に入ったシード校と、予選会を通過した10校の計20校が争う。