【ブダペスト=藤塚大輔】日本記録保持者の泉谷駿介(23=住友電工)が、この種目ではオリンピック(五輪)を含めて日本勢初となる決勝進出を遂げた。13秒16。堂々の1組1着でセミファイナルを突破した。

21年東京五輪と22年世界選手権(米オレゴン州)は準決勝で敗退したが、3度目の挑戦でついに世界舞台の難関を突破した。

納得の進出だった。6月4日の日本選手権で日本新となる13秒04を記録。同30日には、世界最高峰シリーズのダイヤモンドリーグ(DL)ローザンヌ大会で初出場優勝を収めた。日本男子初だった。

今季は世界大会の表彰台ラインとなる13秒0台を3度もマーク。自身も「ダイヤモンドリーグの結果から自信はついている。決勝は安全圏内でいける」と成長を実感している。

課題としていた後半の失速を抑えるため、スタートの精度と動きの再現性を高めてきた。昨季までは、号砲から1台目までの間に「がっついていた」が、今は落ち着いた走り出しを重視する。あえて序盤に執着しないことで、後半でもスピードを維持できるようになった。

さらに、どのハードルも最もスムーズに跳べる約2メートル20センチ手前から踏み切ることができるよう、練習でマーカーを設置。フォームの安定につなげた。その成果もあり、DLでは出場した2試合とも、最終10台目以降のタイムで出場選手中トップ。「減速することなく勢いのままいけている」と手応えをつかんだ。

13秒33(追い風0・5メートル)で今大会の予選を突破した後には「決勝に進出して、メダルを狙えるようだったら狙いたい」と静かに闘志を燃やしていた。日本時間22日午前4時40分からの決勝では、日本勢初のメダルを懸けて、臆することなく頂上決戦に挑む。

◆泉谷駿介(いずみや・しゅんすけ)2000年(平12)1月26日、神奈川県生まれ。横浜緑が丘中、武相高を経て18年に順大へ進学。22年に住友電工へ入社した。前年21年の日本選手権で日本人初の13秒0台(13秒06)を記録して東京五輪代表入り。同種目で日本勢57年ぶりとなる準決勝進出を果たした。22年世界選手権は準決勝敗退。同年秋の全日本実業団対抗選手権では走り幅跳びに出て8メートルをマークし、優勝した。23年日本選手権で13秒04の日本新記録を樹立。好物はコーヒー。175センチ、69キロ。