日本陸連ロードランニングコミッションリーダーの瀬古利彦氏(67)が、下馬評を覆した青学大の選手たちの奮闘を「ミラクル」とたたえた。駒大との心理面での差にも着目し、勝負を分けたポイントを解説。100回大会を迎えた箱根の価値、今後への期待も語った。

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勝って当たり前で勝つことがこんなに難しいんだなと思いましたね。逆に青学大の原監督は、7度目で今回の優勝が一番うれしかったんじゃないかな。

今までは指導力で勝ってきた。今年は違うような気がする。12月には体調不良者が多く出て、けが人もいるとも少し聞いてましたが、選手たちがはねのけました。駒大の1強と言われた選手たちの悔しさもこの結果を生んだ。今までは「原マジック」だとしたら選手がマジック超えの「ミラクル」を起こしたね。

展開ではやはり3区が大きかった。駒大のエース佐藤を、1万メートルの記録では劣る青学大の太田が抜いた。1つの要因はピーキングだったかな。佐藤は11月に1万メートルで20歳以下の日本記録を出したけど、多少は気持ち的に満足する部分があったと思う。逆に青学大は出雲、全日本と負けて、その後のチーム内での感染症の広がりなどで危機感満載。

トラックで勝負すれば、佐藤が100回中100回勝つよ。それでも箱根は違う。「勝って当たり前」の積み重ねが心を疲れさせる。駒大は全員がどこか走りが硬く、重いように感じたし、ぶれてる姿もあった。佐藤が抜かれたことで、それ以降の選手の重圧は一層増したのも響いたかな。

原監督の恒例の作戦名は「負けてたまるか作戦」だったけど、何よりも選手が思っていたね。逆に駒大には来年「なにくそ作戦」で頑張ってほしい。大八木前監督が駅伝の先に世界を目指す指導で培ってきた結果は素晴らしい。継承した藤田監督も、ここで箱根に勝つために変えず、路線を継続した上で「なにくそ」と強化してほしい。

今大会の青学大の新記録は第1回(15時間5分16秒)から100回目で約4時間30分縮まっている。200回目はどうなってるだろうね。速くなれば、世界との距離は縮まる。世界で勝つランナーのためという創設理由からも、大八木前監督の存在も大きいよ。その姿を見て、箱根の先を見ている指導者が増えている。

今回は記念大会で全国化もあったけど、1回だけでは。例えば日本学生連合としての選抜チームの参加があれば、関東以外の選手が箱根を走るチャンスをもらえる。その選手を見た各地のチームメートが、「自分も」となる。200回へ、変化を恐れないで続いていってほしいですね。

【箱根駅伝】全チーム、全区間個人成績一覧