<陸上:金栗記念第57回熊日30キロードレース>◇17日◇熊本市・通町筋電停前スタート、ビブレス熊日会館前ゴール

 公務員ランナー川内優輝(25=埼玉県庁)が、また勝った。28キロ過ぎからの丸山文裕(22=旭化成)とのマッチレースを制し、自己ベストを2年ぶりに36秒更新する1時間29分31秒のコースレコードで優勝。前日はスピード勝負になれば…と白旗宣言していたが、マラソンランナーの意地を発揮した。手応えをつかみ、マラソン日本記録更新にまで夢をはせた。

 周囲を見渡せばマラソン未経験者ばかり。それが川内の闘争心に火をつけた。昨年1万メートル日本ランク1位の宮脇、箱根のスピードスター設楽啓、20人抜きのダニエル、成長株の丸山…。食い下がる後続を、粘着質の神経でふりほどく。集団が8人、4人と絞られ最後は丸山との一騎打ち。「ここで負けたらマラソンランナーの名がすたる」と28キロ過ぎでギアチェンジ。残り800メートルで突き放した。

 2週間前の別大毎日マラソンの疲労が抜けず、調整期間はわずか1週間。「まさか優勝できるとは…」と驚く結果以上の手応えは、1キロを平均2分59秒で押し通しても「相当、余裕があった」というスピード。1キロを3分で押せばマラソンは2時間6分台が可能とあり「7分台への自信になるし、将来的には6分台も十分狙える」。高岡寿成が持つ2時間6分16秒の日本記録も視界に入った。

 レースを実戦練習と位置づける「川内メソッド」を貫く。代表選出が確実な8月の世界陸上モスクワ大会の1カ月前までは、オファーのあるレースを毎週のように選ぶ。驚くことにその数は100を超すという。「我々の常識では判断できないが、我々も世界はこれが当たり前という感覚を持たないといけない」。結果を出し続ける川内を、強化委員会の酒井副委員長も認めざるを得なかった。

 お約束のカレーは前夜、ジャンボソーセージカレーにルーを300グラム、ライスも200グラム、さらにソーセージを追加した。カレーと疲労回復の温泉があれば全国津々浦々、川内は喜んで?

 足を運ぶ。【渡辺佳彦】