スーパーラグビーが今年も始まった。

 日本チーム「サンウルブズ」がスーパーラグビーに参戦して、2年目だ。スーパーラグビーとは、世界最高峰のラグビーリーグで、主に南半球のチームで構成されており、オーストラリア・カンファレンス、アフリカ・カンファレンス、ニュージーランド・カンファレンスに分かれている。日本チームが参戦する前も、パナソニックの田中史朗選手がニュージーランドのハイランダーズ、クボタの立川理道選手がオーストラリアのブランビーズ、パナソニックの堀江翔太選手がレベルズに所属した。

 何名かの選手は“世界最高峰”を体験しているが、多くの日本人選手が経験できるリーグとは言い難かった。これらのことを踏まえると、日本でのチームを持ったことは、発展的な状況にあるということだ。つまり、多くのトップリーガーにチャンスが出てきた。

 今年は2年目ということで、サンウルブズに加入しているメンバーが、日本代表に選出されるということも発表された。

前半、絶妙なタイミングでトライに続くパスを出すサンウルブズWTB福岡堅樹(2月25日)
前半、絶妙なタイミングでトライに続くパスを出すサンウルブズWTB福岡堅樹(2月25日)

 既にスーパーラグビーの開幕戦は2月25日に行われた。基本的に試合は一週間に1度行われる。移動も国をまたぐから、タフな試合スケジュールになることは間違いない。開幕戦は、東京・秩父宮ラグビー場でニュージーランドの伝統チーム、ハリケーンズとの試合が行われた。ハリケーンズがどれくらいすごいチームかというと、昨年のスーパーラグビーで優勝。2015年のワールドカップを制したニュージーランド代表「オールブラックス」の選手が6人もいる、素晴らしいチームだ。

 スコアは17対83で、サンウルブズが敗れた。

 「サンウルブズはこれからのチームだ。長い目で見て欲しい」

 試合後の記者会見で、ハリケーンズのクリス・ボイド監督はそう話した。

 「日本にチームができたことは、ラグビーに関わる人々に喜びを与えただろう」

 歴史あるハリケーンズの監督だからなのか、発言はすべてが印象に残るものだった。勝利を目指し、努力をし、試合に挑むのは当たり前だ。勝者がいれば敗者もいる。また、それとは別に、記者会見で試合を振り返ったときに、少し視点が異なっていることに世界の基準を感じた。

 ラグビー自体のレベルを向上させることを念頭に話をしている。チームが勝利することに最大の努力をすることは当たり前だ。また、ボイド監督の発言からは、ラグビーが大好きで、ラグビー大国ニュージーランドならではの視点から、この先もラグビーを発展させていこうとしていることを感じた。

さらにサンウルブズのフィロ・ティアティア監督も、選手目線に立っての発言が多かった。

 例えば「今回は初めてスーパーラグビーの舞台へ立った選手を称えて欲しい」

 もちろん悔しいだろう。一生懸命やってない選手なんていないのだから。

ハリケーンズに大敗したことを示す掲示板(2月25日)
ハリケーンズに大敗したことを示す掲示板(2月25日)

 スーパーラグビーに日本が参戦することは、スポーツへの理解を生むのではないか。スポーツは白黒はっきりした世界だ。だからこそ、目標を持ち、自分たちの練習や、選んだ道を信じて進んでいく。

 海外のチームは世界のトップレベルばかりだ。つまり勝利には理由がある。チームの歴史もあれば、スタイルも確立している。もちろん勝った方が気持ちいいし、次への課題も見つけやすい。しかし、サンウルブズと一緒に私たちファンも成長していけるのではないか。

 選手でいられる時間は、かけがえのない時間だ。私たちファンも、すべての選手が「やりきった」と、そう思えるその時まで応援しつづけよう。

 スーパーラグビーは、始まったばかりだ。

【伊藤華英=北京、ロンドン五輪競泳代表】

演出の炎と重なって見えたサンウルブズのフランカー、カーク(2月25日)
演出の炎と重なって見えたサンウルブズのフランカー、カーク(2月25日)