競泳の混合メドレーリレーは、最高のエンターテインメントだった。「先に男子2人だから、逃げ切るのは難しいぞ」とか「最初が女子だから、男子で追いつくよ」と、見ながら興奮。いまひとつ調子が出ていない日本は予選落ちしたが、十分楽しめるレースだった。

激しい順位変動に、まさかの大逆転。男女2人ずつをどこで使うかはチームの自由だから、戦略を考えるだけでもおもしろい。男女のメダリストが競う「ドリームレース」も実現する。手持ちのカードでバトルをするゲームのよう。応援に力が入り、思わず絶叫。これが、エキシビションではなく正式種目なのだ。

「混合種目」は、今大会の目玉の1つ。競泳や陸上のリレーなど男女が一緒になって順位を争う種目が9も増えた。これまでは、もともと男女の区別なく競技を行う馬術の6種目を加えても9種目。それが一気に倍増した。今大会は「混合の五輪」ともいえる。

IOCが掲げる「男女平等」が背景にある。参加選手数を同じにするためだ。ただ、それだけなら種目数を合わせればいい。あえて混合にこだわったのは「テレビ」を意識したから。若者人気挽回のためスケボーなどの新競技を五輪に「ねじ込んだ」(結果的はよかったが)のと同じだ。

男女が互いに理解し、協力し合いながら勝利を目指す。緊迫感の続く五輪の中で少しホッとする部分がある。もちろん、競技にもよるが、試合中に会話をする選手たちにも笑顔がみられる。以前、卓球世界選手権で吉村が石川の頭を「ポンポン」したように、どこかほほ笑ましい光景もある。

「テレビ受け」を狙った混合種目は「日本受け」もする。選手もファンも、団体やリレーが好き。男女の選手が助け合い、補い合いながら戦う「絆」が、日本人は大好きだ。さらに、日本は強い。競泳が予選落ちし、バドミントンも準決勝で敗れたが、真剣に取り組もうという姿勢がある。

「金メダル確実」と言われるのが柔道の団体。基本的に男女が一緒に練習することはなかったが、混合のために合同でけいこ。チームビルディングのゲームも取り入れ「チームの和」を養った。最初は照れながらやっていた選手も、徐々に慣れる。チームの一体感は今大会の成績にも表れる。

五輪の「ショー化」は止まらない。IOCバッハ会長は「混合種目は五輪に新しい価値を生む」と話したが、同時に単純に速さや強さを競う五輪は衰退するかもしれない。ただ、確かに見ていておもしろいし、新型コロナ禍で強いられるステイホームのテレビ観戦にはぴったり。31日は陸上や競泳、柔道など混合種目が盛りだくさん。家族そろってテレビの前で楽しむにはよさそうだ。【荻島弘一】(ニッカンスポーツ・コム/記者コラム「OGGIのOh! Olympic」)

バドミントン混合ダブルスの準決勝を戦った渡辺勇大(右)、東野有紗ペア(ロイター)
バドミントン混合ダブルスの準決勝を戦った渡辺勇大(右)、東野有紗ペア(ロイター)
バドミントン混合ダブルスの準決勝を戦った渡辺勇大(右)、東野有紗ペア(ロイター)
バドミントン混合ダブルスの準決勝を戦った渡辺勇大(右)、東野有紗ペア(ロイター)