「自分がやっているから、選手は『出ますよ』と言ってくれるけど(東京五輪前の)20年1月はそんなこといってられない。その状況でも『出たいな』と思う大会にすることが大事」。

競泳で五輪2大会連続2冠の北島康介氏(36)の名を冠した「KOUSUKE KITAJIMA CUP 2019」が17日から東京辰巳国際水泳場で開かれた。例年は毎年1月末の開催だが、今年は会場の改修工事の関係で2カ月前倒しで開催した。今年も萩野公介、池江璃花子らトップスイマーが参加している。

次回は、20年1月24~26日で開催する。その時期は、東京五輪代表選考会となる同年4月の日本選手権前にあたる。北島氏は、五輪にすべてをかける選手心理を理解した上で、魅力ある大会にすることを目指している。

北島杯は、今大会が5度目だ。「僕らのころは秋の長水路(50メートルプール)大会が、東スイ招待(東京スイミングセンター招待)ぐらい。試合のために海外にもいった。そのうちコナミオープン、きらら杯(山口)とか増えた。たくさんの試合を作っていこう(国内で)大会に出られるチャンスも増やしたい」と説明する。自分の名前を使って、選手たちの試合機会を増やすことに尽力した形。またトップ選手が出ることでジュニア選手の励みになる。ちなみに入場料は無料だ。

16年4月に現役を引退して2年半。今、感じていることがあるという。萩野、池江らは11月、W杯東京大会→北島杯→東スイ招待と3週連続でレースに出場する。北島氏は「おれなら出ないよ、嫌だもん」と笑った後で「僕らのころは4月の日本選手権、夏の世界大会と1発にかけていた。今の選手たちはレースをしながらベースを作って泳ぎを修整していく。強化練習をしなくてもトップスピードが出ている。選手たちの意識が上がって、高いレベルでやっている。『こうなりたい』というレベルを見据えている」と口にした。

今大会から男女1人ずつのMVPに賞金50万円が贈られることが決まった。MVPの賞金について、北島氏は「おれの思いつき」といたずらっぽく笑った。国内で珍しい賞金の設定に賛否両論があることも百も承知した上で、新しい試みをちゅうちょしたりしない。その上で「次回大会も、盛り上げるよ。海外からも選手が来てくれるような大会になればいいなと思っている」。「水泳界のレジェンド」は、輝かしい現役時代の実績にあぐらをかいたりしない。6度目の大会に向けて、着実に歩みを進めていく。【益田一弘】(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「We Love Sports」)

◆益田一弘(ますだ・かずひろ)広島市出身、00年入社の42歳。五輪は14年ソチ大会、16年リオデジャネイロ大会、18年平昌大会を取材。16年11月から水泳担当。