16年に函館市などが北海道での競輪選手育成を目的に立ち上げた「ホワイトガールズプロジェクト」(WGP)に今春、初めて女子高校生が加わった。昨年の高校総体自転車500メートルタイムトライアル6位の神戸暖稀羽(ののは、函館大谷2年)、他競技から挑戦する畠山ひすい(函館遺愛女3年)の2人。ともに競輪選手を夢見て故郷から函館市に移り住み、日本競輪選手養成所合格を目指す。

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「25歳で賞金女王」。16歳の神戸は9年後の未来を頭の中に明確に思い描く。こうも言った。「競輪選手になることだけが目標じゃない」。岩見沢栗沢中入学と同時に抱いた夢は大きい。それ以来、机の全ての引き出しに入っていたほど大好きだったチョコレートを封印した。次に食べるときは、競輪選手になったときと決めたからだ。

「直感だった」という競輪との出会いは中学入学直前。春休みに家族で行った函館競輪場で、女性レーサーの走りに衝撃を受けるとともに「自分にもできるんじゃないか」と感じた。中学ではバレーボール部にも入ったが「背も小さいしコートの中でも輝けるタイプではなかった」。153センチの自分でも輝くために夢はあくまで競輪選手で、中学1年の夏にはロードレースの大会に出場していた。

函館競輪場で練習できる環境を求めて自転車競技の強豪函館大谷に進学。5人の男子部員に交じって練習を積み、昨年の総体500メートルトライアルでは6位。10月には道連盟の強化指定選手に選出。「表彰台に行けた」と上位進出を見据えた今年の選抜、総体は中止となったが腐らなかった。下宿先でも今冬自ら実施したクラウドファンディングで集めた資金で購入した室内練習用バイクにまたがる。

4月に同プロジェクト初のユース生として加わったWGPでは「自転車への向き合い方が変わった」。先輩レーサーから技術面だけではなく、プロの姿勢を学んでいる。部活動と合わせて競輪場に通い詰め、「最後の200メートルとか体の芯がぶれてしまう」という課題を克服していく。

2年生のため養成所受験は来秋を予定するが、今年中には試験を突破できる実力をつける。「来年の総体では優勝。秋には試験に合格して、19歳でプロデビューする」。1つずつ階段を上って、大きな夢をたぐり寄せる。【浅水友輝】

◆ホワイトガールズプロジェクト ガールズケイリン選手の発掘、育成を目的として、函館市、日本トーター、日本競輪選手会北海道支部が実施している共同プロジェクト。16年4月に開始して、これまで1期生3人、2期生1人、3期生1人、4期生2人が在籍。7人中5人が日本競輪選手養成所(18年までは日本競輪学校)候補生試験に合格し、1、2期生の計3人がプロデビュー(1人は引退)。