<第86回箱根駅伝>◇2日◇往路◇東京-箱根(5区間108キロ)

 「花の2区」にスーパールーキーが現れた。東海大の村沢明伸(1年)が、日本人ルーキー史上最多の10人抜きを達成した。エースが集う2区で、14番目にタスキを受けると、区間賞の日大・ダニエル(4年)の記録に31秒差に迫る1時間8分8秒の区間2位の快走で、4位まで浮上した。同区間を走った1年生としては、歴代2位の好タイムだった。チームは4区からブレーキとなり往路12位に終わったが、村沢が鮮烈な印象を残した。

 ゴールした村沢は精根尽きたように倒れ込んだ。「花の2区」を今大会唯一、1年生で任された。その重責から解放されたように、力が抜けた。それでも体力が戻ると「(1時間)8分00~8分20ぐらいを想定していたので目標通り。できればもう1人抜きたかった」と何度も箱根を経験したランナーのように話した。

 13位でタスキを受けた日大・ダニエルと4秒差の14位スタート。「レースが始まれば1年も4年も関係ない」。後方を振り返りながら走るダニエルの視線を受け流した。「誘いには乗らない」。前半は慎重に、14キロ~15・5キロで約20メートル上がる権太坂を越えてからの勝負。雰囲気にのまれず、新居監督の指示を守った。

 7キロ過ぎに法大をとらえ、ごぼう抜きを開始。19・5キロすぎて青学大、東洋大、専大をまとめて一気に抜き去る。最後は21・5キロ付近で早大の尾崎をかわして日本人ルーキー史上最多となる10人抜き。東海大の伊達秀晃が05年にマークした2区の1年生歴代最高タイムにあと4秒差に迫った。

 1年生だがレベルは突出し、上級生から助言を求められる。いくらでも甘えられるが、自分に厳しい。新居監督は「1000メートル7本の練習も自分から『10本やる』と言ってくる。自分の価値ある能力をどうやれば出せるか分かっている」と認める。

 佐久長聖高3年時に全国高校駅伝を優勝。東海大の門をたたいたのは高校の先輩たちの存在があったからだ。「(監督の)両角先生や、入れ違いだけど、佐藤悠基先輩も東海大出身。尊敬する先生や先輩が強くなった環境で、強くなりたいと思った」。両角監督の「攻めの走りをしないといけない」という言葉は今も信条にしている。佐藤からは「先輩の箱根の走りをビデオで見返して、教えてもらっている」と言う。

 昨年は柏原が脚光を浴びたスーパールーキーの座を村沢が継承した。今年は5区起用のプランもあった。来年以降、直接対決の可能性もある。「5区であの走りができるのが柏原さんの強さ。そういう強い選手とトラックでもロードでも勝負したい」。村沢の夢が広がる。【広重竜太郎】