日本が悲願のベスト8進出に望みをつないだ。日本(世界ランク12位)はサモア(同11位)に完勝し、通算2勝1敗(勝ち点8)で初めて1大会2勝を挙げた。

 WTB山田章仁(30=パナソニック)が、華麗なトライで勝利を呼び寄せた。前半終了間際、サモアゴール前のラックから右に展開。タッチライン際でパスを受けた山田は相手タックルをクルリと体を1回転させてかわすと、ゴール右スミに飛び込んだ。

 ラインズマンは山田の足が出たと旗を上げたが、テレビジョンマッチオフィシャルでは足が出る前にトライしたスーパープレーがはっきりと映し出された。難しいゴールをFB五郎丸が決め、攻撃力のあるチームに20点の差をつけた。守備でも好タックルを連発したが、後半15分に相手との接触プレーで負傷交代。スタンドからは、大きな拍手が送られた。

 南アフリカ戦では、背番号14で歴史的勝利に貢献。しかし、続くスコットランド戦は出番がなかった。南ア戦の翌日にリフレッシュのために入った海で、毒を持つ「ウィーバーフィッシュ」に刺されたからだ。刺し身でも空揚げでも美味なオコゼの仲間だが、激しい痛みをともなって真っ赤に腫れ上がった。「全試合に出てトライをとりたい」と話していた山田にとっては無念の欠場だったが、痛みが引き、大会初トライで悔しさを晴らした。

 福岡・小倉高から一般入試で慶大入り。華麗でトリッキーなステップで「山田がボールを持つと、何かが起きる」と言われるトライゲッターが、本場のスタンドを沸かせた。12年にはアメフットとの二足のわらじを履くなど話題をふりまいた男が、最高の舞台で最高のプレーをみせた。