障害馬術で00年シドニー五輪代表の広田龍馬(39=那須トレーニングファーム)が、亡き父の後押しを受け、16年ぶりの五輪出場とメダル獲得を誓った。

 19日、都内で取材に応じた広田はリオデジャネイロ切符を目指し「馬術はどの競技よりもお金がかかる。父の遺産を全部つぎ込んだので、とにかくメダルを取る」と言い切った。

 馬の調教名人だった父健司さんは14年7月に他界。遺体の前でもう一度、父も夢だった1932年ロサンゼルス大会の中竹一の金メダル以来となる日本勢のメダル獲得を誓った。独特の風貌で「こんな頭ですけれど、お坊さんでなく、ただハゲただけです」と終始笑顔を見せたが、過去3大会でいずれも補欠に甘んじた悔しさがある。シドニー五輪では「気難しい暴れ馬」(広田)で格安だった20歳の高齢馬を父と二人三脚で鍛え上げて出場した。そして今回、昨年2月にオーストラリアでニックオブタイム号を購入することができた。「間一髪。ギリギリ間に合った、という意味の馬名です。運命を感じました」。父の遺産が、その手助けとなった。

 同種目は来年6月までには五輪出場の意思表示をした15人から、代表4人が決定する。それまでは海外の大会を転戦して基準を満たす必要がある。普段は社長だが、その間は妻思乃さん(32)が業務を代行する。「しばらくは妻のヒモになります。自分は会社で取締役ですが、家庭では取り締まられ役」と冗談を言いつつ、父や家族に恩返しの代表切符を土産にするつもりだ。