リオデジャネイロ五輪出場内定者で最年長の障害馬術・桝井俊樹(46=乗馬ククレイン)が26日、関西空港から活動拠点のオランダに向けて出発した。

 今後日本に戻る予定はなく、ドイツを経て直接リオ入りする。最年長の話題には「自分がここまで年を取ったんだなと、自覚させられます」と苦笑いしながらも「(五輪に)行くだけで終わりじゃない。団体でそれぞれが力を発揮すれば、入賞も夢じゃない」とキッパリ。初の五輪に胸を躍らせている。

 高さ160センチ、奥行き200センチにもなる障害を飛び越える姿は迫力満点だが、馬術から離れれば46歳の素顔をのぞかせる。小学4年生までは奈良・新庄町(現葛城市)の少年野球チームに所属。「小さい頃は巨人の王貞治さんが現役で、プロ野球選手になりたかったんです。テレビでずっと見ていました」。自身が小学5年生の秋に引退したスターのとりこだった。乗馬を始めたのは8歳。「動物が好きで、小学生の弱い力でも馬が言うことを聞いて動いてくれたのがうれしかった」。中学1年生から本格的に競技を始めた。

 五輪への挑戦は3度目だった。04年アテネ、12年ロンドン五輪を目指すも、夢舞台にはたどり着けず。2年半前にオランダで愛馬として戦うダルーペダルコKZと出会い「この馬だったら五輪に行ける」と鍛錬を積んだ。現在は1年の3分の2をオランダで暮らす。馬と触れ合い38年。「選手としてのモチベーションは落ちない」とまだまだ引退の文字はよぎらない。

 馬術界では馬場馬術の法華津寛(ほけつ・ひろし)が、12年ロンドン五輪に71歳で出場。他のスポーツでもサッカーの三浦知良が49歳の今も現役。プロ野球の山本昌も50歳の昨季までプレーを続けた。桝井は笑って言う。「僕が周りの人にパワーを与えるなんて、恐れ多い。すごい選手たちが僕よりも長くやられている。何歳まで…と決めずに来たら、たまたまこの年齢になっただけです。障害が好きなんです」。謙虚な男は黙々と、本番への準備に入る。

 ◆桝井俊樹(ますい・としき)1969年(昭44)京都府生まれ。8歳で初めて乗馬を経験し、奈良・新庄中入学後に選手として本格的に始動。大阪・近大付在籍中の86年山梨国体では障害飛越で優勝。現在はオランダを練習拠点としながら、乗馬ククレインで会員の指導を行っている。165センチ、60キロ。